September, 15, 2017, 東京--NICTネットワークシステム研究所は、早稲田大学理工学術院 川西哲也教授と共同で、多数の光信号を同時に受信し、高速に電気信号に変換する高速集積型受光素子を開発した。
開発した光素子は、約0.1mm2に32個の受光部を集積しており、光通信において多チャネルの光信号を一括受信し、チャネル別に10GHz以上の高速電気信号に変換する。
ネットワークの幹線やデータセンターでは、飛躍的に増大する情報量を限られたスペースと電力で処理する必要がある。この素子の開発により、多数の光受信器を集約し、大容量光通信装置の大幅な小型化と低消費電力化が可能となる。さらに、この光素子の多チャネルの光信号を高速に処理できる特長は、イメージセンサやレーザ測距等への応用も期待される。
NICTと早稲田大学は、光通信において波長多重伝送をはじめ将来のマルチコアファイバ等の多チャネル光信号の一括受信を可能とする集積型受光素子を開発した。
開発した要素技術は以下のとおり。
・素子間の信号の漏れを抑制するクロストーク制御技術
・光信号を電気信号へ変換する高速受光素子技術
・半導体を作製するための高密度集積技術
・性能評価技術
本開発では、早稲田大学はクロストーク制御技術を用いて集積化の設計を行い、NICTは高速受光素子技術、高密度集積技術により本素子を作製し、受信性能の評価を行った。なお、高速受光素子技術の一部は、総務省電波資源拡大のための研究開発の一環として実施されたものである。
光素子は、複数の光信号を一括受信して電気信号に変換するため、光受信器数を大幅に削減し、省スペース化を行い、さらに、各光受信器が搭載する消費電力の大きい信号処理回路を1つに集約することで省電力化を可能とする。今回、同素子をマルチコアファイバ、マルチモードファイバと直結して光信号の受信に成功したことにより、将来の光ファイバ用超小型受信器の実現性を確認した。
また、この素子は2次元面上に到来する赤外光の強さと位相差を計測でき、イメージセンサやレーザ測距等への応用も期待される。光素子は、CCDイメージセンサと比較して約1,000倍~10,000倍高速な10GHz以上で並列動作し、集積数を高めても動作速度への影響は小さく、フレームレートの高いイメージング等に有効と考えられる。
(詳細は、www.nict.go.jp)