April, 18, 2017, Lausanne--スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、光変換技術で最も有望な材料の1つ、二酸化チタンの隠れた特性を明らかにした。
二酸化チタン(TiO2)は現在、光発電や光触媒の最も有望な材料の1つである。この材料は多様な結晶形態で現れるが、応用に最も魅力的なものは「アナターゼ」である。
アナターゼTiO2は、幅広いアプリケーションに関わっており、光発電や光触媒から自己洗浄ガラス、水/空気の浄化まである。これらすべてが光吸収とその後の電荷への変換をベースにしている。多様なアプリケーションでの幅広い利用を考慮すると、TiO2は実験的、理論的の両面で20世紀に最も研究された材料の1つであった。
TiO2などの半導体材料に光を照射すると、自由電子かホール電荷、あるい中性の電子-ホール結合ペア、すなわち励起子(エキシトン)が生ずる。エキシトンに対する関心は非常に高い。ナノスケールレベルでエネルギーと電荷の両方をトランスポートでき、次世代エレクトロニクス、いわゆる「エキシトニクス」全領域の基盤となるからである。これまでTiO2の問題は、光を吸収する物理的対象の性質と特性を明確に特定できず、特徴を明らかにできなかったことである。
EPFLのMajed Cherguiグループはスイスおよび国際研究者と共同で、最先端の実験法、定常状態・角度分解分光計(ARPES)、分光エリプソメータ、超高速2D DUV分光学の組合せを利用することでこの長期的問題に光を当てた。ARPESは、固体の異なる軸に沿って電子のエネルギー論をマッピングする。分光エリプソメータは固体の光学特性を高精度に確定する。これらは、最先端の第1原理理論ツールとともに、材料研究で初めて用いられた。
光学吸収スペクトルのしきい値が強結合励起子のためであることを研究グループは発見した。これは、2つの際立つ新しい特性を示している。1つは、材料の3D格子の2D面にそれが閉じ込められていること。これは、凝縮物質において報告された始めての事例である。二番目に、この2D励起子は温度や欠陥の影響を受けないこと。
励起子が、このように長期の構造破壊や欠陥を免れることは、それが光の形での入力エネルギーを貯めて、選択的にナノスケールでそれを誘導できることを示唆している。これは、現在の技術と比較して非常に大きな改善を約束するものである。現状技術では、吸収された光エネルギーは結晶格子への熱として散逸し、従来の励起スキームは極めて非効率になる。
さらに、新発見エキシトンの特徴は、物質の多様な外的、内的刺激(温度、会力、過度の電子密度)に対して非常に高感度であり、光読み出しを備えたセンサには、強力で正確かつ安価な検出スキームへの道が開かれる。
「アナターゼTiO2材料の製造が安価で簡単ならば、こうした発見は多くのアプリケーションにとって重要な意味を持つ。光が吸収された後に電荷がどのように生成されるかを知ることが、効率のよい光触媒にとっては重要要素となる」とMajed Cherguiは話している。
(詳細は、www.epfl.ch)