March, 24, 2017, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)は、デンマーク工科大学(DTU)、フジクラ、北海道大学(北大)、サウサンプトン大学(UOS)、コリアント有限会社(COR)各社と協力し、32個のコア(光の通路)を持つ光ファイバ1本で毎秒1ペタビット(Pb/s)以上の超大容量データを、205.6kmにわたり光増幅中継することに成功した。これまでの1本の光ファイバを用いた1Pb/s容量級の伝送実験に比較し、必要な光信号帯域を従来の半分以下としながら、高効率な世界最長の長距離光増幅中継伝送を実証した。さらに新たな超高速多次元符号化変調技術の適用により、1Pb/s級光信号の1000km以上の長距離伝送の可能性を初めて示した。
1Pb/sという数値は、2時間のハイビジョン映画5000本を1秒間で伝送可能な速度に相当し、約1000km級の伝送距離は、日本やヨーロッパにおける主な大都市間の伝送距離に相当する。現在の長距離光ネットワークの伝送容量を、今後も100倍以上に拡大し、ICT社会の更なる発展を支える情報基盤を実現できる可能性を示している。
今回の成果はOFC2017ポストデッドライン論文として発表される。
技術のポイントおよび役割分担
(1)32コア-マルチコア光ファイバ伝送路
今回適用したマルチコア光ファイバは、DTU、フジクラ、北大が共同で設計・試作し、32個のコアにおいて種類の異なる複数のコアを用いた新構造(シングルモード異種コア構造MCF)を有している。このファイバの特徴は、屈折率のわずかに異なる2種類のコアが正方格子状に配列されていること。この構造により、1種類のコアを用いる同種コア構造のマルチコア光ファイバに比べて、コア数を20以上に増やしても隣接するコア間のクロストークを大幅に低減でき、長距離伝送を実現できる。今回、NTTおよびCORにより、32コアMCFとフジクラ・UOS・NTTで設計試作した入出力デバイスを接続した51.4kmマルチコア光ファイバ伝送路としての長距離伝送特性を評価した。その結果、全コアのC帯全波長域にわたり、32コアMCF伝送路として1000km以上の伝送に適した低クロストーク特性と低損失特性との両立の実現を確認した。
(2)多次元符号化16QAM変調技術
近年の大容量光通信では、光ON/OFFの2つの状態を使って伝送する強度変調信号に代わり、光の波の性質(位相・偏波)を用いて多数の信号状態を作り高効率な光伝送を実現する偏波多重多値QAMデジタルコヒーレント信号が用いられている。多値QAM信号は、光の位相や偏波を用いた複数の光信号状態に複数ビットのデジタル信号を対応させ高効率な超高速光信号を実現できる反面、多値数が増加し伝送効率を増加するほど、伝送可能な距離が急激に短くなる。また、マルチコア光ファイバ伝送に特有のクロストークに対しても劣化しやすくなることが課題。
今回、NTTは、QAM信号の多値数を従来報告の32値以上から16値まで低減し、高効率な誤り訂正符号を用い、広帯域なデジタルアナログ変換技術をデジタルコヒーレント信号に適用した。その結果、1波長あたり680Gbit/s容量で毎秒ぺタビット(Pb/s)容量としては世界最長の205.6km伝送に成功した。さらに、新たに8次元符号化16QAM変調技術の適用により、デジタル信号と光信号状態の割り当て方を工夫することで通常のQAM符号に比較して伝送品質を向上し、同じ16値QAM信号を用いながら、1波長あたりの510Gbit/s容量で、伝送距離を1000km以上長距離化可能なことを実証した。
(詳細は、www.ntt.co.jp)