March, 7, 2017, Okinawa--沖縄科学技術大学院大学(OIST)の錯体化学・触媒ユニットの新たな研究では、光輝性化合物(PL)をより効率的に作製する新手法を編み出し、Journal of Materials Chemistry C誌にその成果が掲載された。
PL化合物の生成は、主に二つの手法に集中している。一つは従来型の金属リガンドシステム、もう一方は凝集ベースシステム。前者では、化合物がある一定の波長の光を放つために金属イオンに強く配位する複雑なリガンドもしくは化合物を必要とする。しかし、このシステムは強く安定化されてしまうため、化合物がひとたび生成されると修正することができない。それに対して後者は、異なる分子または分子パーツの間での弱い相互作用によるもので、PL化合物と周辺環境との相互作用により、放つ光の色をシフトさせるという同調性が可能。しかし凝集の手法では、コントロールが難しく、精度を必要とするシステムでの使用は現実的ではない。
ジュリア・クスヌディノワ准教授率いる研究チームは、ひとつの分子内において原子間の弱い相互作用による光輝性を持つ化合物を設計した。その結果、分子間の凝集を必要としない、単分子システムを用いて凝集性ベースの同調性を得ることができた。
錯体化学・触媒ユニットでは、分子に追加された置換基の大きさによって光輝性の調整が可能な化合物を生成した。
フィロネンコ博士によって合成された分子は、従来型の金属リガンドと似て、光輝性を生み出すために相互作用するリガンドと銅イオンから成り立っている。OISTで合成した分子のリガンドは強固ではなく、二つのリングと呼ばれる環状結合の原子構造の積み重なりによって、単分子内において、凝集システムのような相互作用を可能にしている。さらに、この分子が発する光の色をこれらのリング間の距離により調整できることを研究者らは発見した。フィロネンコ博士は、「他のどの原子グループがリガンドに結合しているかにより、化合物から出てくる光の色を変えられることがわかった。より大きなグループであれば、リング同士の距離を縮め、光の色もオレンジから黄色系統になる。一方、より小さな置換基の場合、リング同士が離れ、放つ光が赤系統になる。このように分子から放たれる光の波長を同調させることができることは、従来の金属リガンドPL化合物では成し得なかったことだ」と説明している
同調性やコントロールのしやすさは、この化合物が様々な応用への可能性を秘めた物質であることを示している。「周辺環境に対して非常に高い感度を持つため、これらの化合物はセンサとして使用するのに大きな可能性を秘めている」とフォロネンコ博士は語っている。
(詳細は、www.oist.jp)