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光照射でナノ炭素材料の高純度な薄膜を簡便に形成

February, 1, 2017, Sunnyvale--産業技術総合研究所(産総研)機能化学研究部門スマート材料グループ 神德啓邦研究員、松澤洋子主任研究員、木原 秀元 研究グループ長らは、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)などのナノ炭素材料の分散液に光を照射することで、ナノ炭素のみの層を、簡便に薄膜化(膜厚:20~30nm)できる技術を開発した。
 ナノ炭素材料に選択的に吸着し、紫外光を当てると脱着する特殊な分散剤を見出した。この分散剤とナノ炭素材料を有機溶媒中で混合すると、均一な分散液が得られる。分散液を基材上に塗布し、20秒程度紫外光を照射すると、照射部分でだけ分散剤が脱着してナノ炭素材料の薄膜が形成される。また、照射していない部分のナノ炭素材料や脱着した分散剤は洗浄により簡単に取り除ける。

 従来、導電特性低下の要因となる分散剤の残留がない高純度のナノ炭素材料薄膜を得るには、複数の煩雑な工程が必要であり、ナノ炭素材料薄膜を電子デバイスへと応用する際のネックとなっていた。今回開発した技術では、分散剤が残留せず、薄膜化とパターニングの工程が大幅に短縮されるので、ナノ炭素材料の特徴を生かした柔軟で軽量な二次電池やキャパシターなどの次世代電子デバイス開発が促進される。

ナノ炭素材料の薄膜化では、有機溶媒を用いたウェットプロセスが主に利用されている。まず、有機溶剤中でもナノ炭素材料を分散でき、さらに光に応答してナノ炭素材料の分散状態を制御できる光応答性分散剤を開発。この分散剤とナノ炭素材料(単層CNTなど)を炭酸プロピレンなどの有機溶媒中で混合すると、均一な分散液が得られた。この分散液をPET樹脂の基板上(2.5 cm角)に塗布し、基板の下方からフォトマスクを通して20秒程度紫外LED光(波長:365 nm)を照射。光照射後、分散液を基板から除去し、基板を有機溶剤で洗浄すると、光を当てた部分にだけ、単層CNTが析出し薄膜(膜厚:20~30nm)が形成されていた。X線光電分光法(XPS)により、この単層CNT薄膜には分散剤がほとんど含まれないことを確認。光照射前には単層CNTは均一に分散しているが、フォトマスクを通して局所的に紫外光を照射すると、基板近くの単層CNTから優先的に分散剤が脱着し、同時に単層CNTが基板上に析出したと推定される。また、分散液の濃度や光照射時間を変えることで、数十nm~数十µmの範囲で膜厚を制御できた。
 従来のウェットプロセスでは、曲面や凹凸面での薄膜化は困難だったが、今回開発した技術により、無機・有機を含む、さまざまな素材や形状の基材上でも、単層CNT薄膜を作製できる。原子間力顕微鏡(AFM)による観察では、繊維状の単層CNTが明瞭に確認でき、単層CNTが本来の形状を維持したまま薄膜になっていることが分かった。この技術によって、ナノ炭素材料の特徴を生かした柔軟で軽量な次世代電子デバイス(二次電池やキャパシターなど)の開発促進が期待される。

 この技術の詳細は、2017年2月10日につくば国際会議場で開催される「材料・化学シンポジウム」、2017年2月15~17日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2017 第16回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」にて展示する予定。