January, 16, 2017, San Diego--カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、連続体中の束縛状態(BIC)と言われる一般的ではない波動物理学に基づいた世界初のレーザを実証した。その技術は表面発光レーザの開発に革命を起こす可能性があり、通信やコンピューティングアプリケーション向けにレーザはよりコンパクトでエネルギー効率が向上する。新しいBICレーザは、産業および防衛アプリケーション向けの高出力レーザとしても開発可能である。
UCSD工学部の電気工学教授、研究リーダー、Boubacar Kanté氏は、BICレーザについて、「既存のレーザ技術でまだ実現されていない独特の、前例のない特性を提供するものである」とコメントしている。
例えば、BICレーザは、様々な波長のビームを放出するように素早くチューニングできる。これは、正常な組織に損傷を与えることなく正確にガン細胞を標的とするような医療用レーザにとって有用な特徴である。BICレーザは、特殊形状(スパイラル、ドーナッツ、ベルカーブ)、いわゆるベクトルビームを放出するようにもできる。これによって、既存技術よりも10倍の情報を運ぶ、極めて強力なコンピュータや光通信システムが可能になる。
連続体における束縛状態(BICs)は、1929年以来、存在すると予言されていた。BICsは、開放系で完全に閉じ込められた、つまり束縛された波動。局所化されており、逃げ道があるにも関わらず逃げない。
以前の研究では、研究チームは、マイクロ波周波数で実証した。BICsは効率的に光をトラップして蓄積し、強力な光と物質の相互作用を可能にする。今回は、BICsを利用して新しいタイプのレーザを実証した。
この研究では、BICレーザは、半導体InGaAsPで作製された。空中に浮かんだナノサイズの円筒(シリンダー)アレイとして膜が構築されている。シリンダーは、支持ブリッジの網目によって相互接続されており、これによってデバイスは機械的な安定性を得ている。
膜に高周波光ビームを印加することで研究チームはBICシステムが独自の低周波レーザビーム(通信周波数)を放出するように誘導した。
「現在は、これはBICでレーザ発振が達成可能であることを示す概念実証のデモである」とKanté氏は、コメントしている。
「注目に値することは、8×8粒子の小さなアレイで面発振を起こすことができたことだ」と同氏は言う。データ通信で広く用いられているVCSELは、発振するためには、遥かに大きなアレイ(100倍)を必要としている、したがってパワーももっと必要である。
同氏によると、一般的なVCSELはいずれBICSEL(bound state in the continuum surface-emitting laser)に取って代わられる。より小さく、低消費電力になるからである。研究チームはこの新しいタイプの光源について、すでに特許申請を行った。
アレイはサイズを拡大して産業および防衛アプリケーション向けの高出力レーザを実現することも可能である。「ハイパワーレーザの基本的な課題は加熱であるが、BICレーザの効率は予測されており、新しい時代のレーザ技術が可能になると考えられる」と同氏は話している。
研究チームの次のステップは、電気駆動のレーザである。