December, 13, 2016, 東京--東京工科大学コンピュータサイエンス学部の松下宗一郎教授らの研究チームは、腕時計サイズの小型軽量で日常生活での利用も可能な、高精度のモーションキャプチャシステムの開発に成功。医療分野などでの活用に向け、同大医療保健学部などと共同で実証実験を開始した。
人の動きをコンピュータに入力する「モーションキャプチャ」の技術は、スポーツの身体計測等で複数のカメラを用いた光学式システムや、市販のコンピュータゲーム等で赤外線カメラや重心揺動計を用いたシステムなどが用いられてきた。
現在実用化されているモーションセンサによる加速度と角速度の計測をベースとしたモーションキャプチャシステムは、導入コストが高額になることや、センサ出力特性が時間や温度によって変化するため専門業者によるメンテナンスが必要になるなど、手軽に利用できるものではなかった。研究では、角速度センサの姿勢角を9個のベクトルで表すことで、基準位置からの姿勢角変動を非常に少ない計算量で求める方法を開発した。これにより、消費電力の少ない超小型マイクロコンピュータでの処理が可能となったほか、センサ出力特性の時間・温度変動についても、アプリケーションへの影響を最小限度に抑えている。加えて、地磁気センサや角速度センサ等による姿勢補正を必ずしも必要としないシステムであることから、小型の充電池で長時間(4~8時間程度)の使用が可能。また、従来は複数個のセンサを組み合わせることで精度を維持するシステムが主流であったのに対し、開発したシステムでは腕時計型のデバイス単体での利用も可能である。これらにより、試作の段階にて腕時計サイズの総重量約60g以下という小型軽量設計を実現したほか、コスト面でも、すでに流通している部品のみを使用していることから、数千円程度の原価で留めることができる。
研究チームは、東京工科大学医療保健学部臨床工学科の篠原一彦教授、加納敬助教との共同研究により、一次救命措置における胸骨圧迫の正確なモニタリング手法への適用を想定し、腕時計型デバイス単体にて実用的に動作する重力キャンセラー及び重力以外キャンセラーシステムの開発を進めている。