December, 8, 2016, Singapore--A*STARデータストレージ研究所のDoris Keh-Ting Ngの研究チームは、シリコンと発光半導体の結合がマイクロスケールのレーザ開発に役立つことを示した。
シリコンは電子デバイスの製造に革命を起こした。この豊富な半導体は、工業レベルに拡張性のある方法を用いてトランジスタなど、微小コンポーネントに加工できるので、1チップに数十万の素子を作製することが可能になる。電子技術者は、光を発光させ、操作し検出できるようにすることで、これらの集積回路の機能を一段と拡張したいと考えている。
これらオプトエレクトロニクスデバイスはデジタル情報処理を高速化し、例えばバーコードスキャナで使えるマイクロスケールのレーザに行きつける。しかし問題は、シリコンが効率的な発光素子でないということである。
研究チームは、シリコンと他の発光半導体材料、InGaAsPを結合することでシリコン製造技術に適合するレーザを作製した。「われわれの成果は、極薄III-V半導体層を用いてシリコン上に効率的でコンパクトなアクティブオプトエレクトロニクスデバイスを実現する有望なアプローチであることを実証している」とNg氏は説明している。
同氏によると、レーザ構造で考慮すべき重要な点は光フィードバックである。さらに、光を生成するために構造内に光をトラップする能力である。従来のレーザでは、発光域の両端にミラーを置くことでこれを可能にしている。研究チームは、その代わりに、筒状デバイス形状を採用した。これが生成された光の一部をデバイス壁でトラップし、それをシリンダー内で回転させる。これはウイスパリングギャラリモードと言われている。大聖堂のドームのような円形の部屋で同じ効果が音の波をトラップするからである。
研究チームはシリコン基板からスタートした。その上に薄いシリコン酸化物の層を堆積した。光学アクティブInGaAsP膜、わずか210nm厚の膜は、別に作製してシリコン酸化物の上にボンディングした。研究チームは、材料の一部をエッチングして、直径が2µmまたは3µmのシリンダーを作製。3µmデバイスは、波長1519nmでレーザ発光し、これは商用光通信システムで使われている波長に極めて近い。
このデバイス固有の特徴は、ウイスパリングギャラリモードがシリコンとInGaAsP領域の両方に広がっていることである。InGaAsPは、光増幅に、一方シリコンは光のパッシブ導波に寄与する。「われわれの次のステップは、このアイデアを室温動作デバイスに適用することである。高温動作ではレーザの設計や製造の微調整が必要になる」とNg氏はコメントしている。