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電子ガンをマッチボックスサイズに縮小

December, 7, 2016, Hamburg--ドイツ電子シンクロトロン(DESY)とMITの国際研究チームは、マッチボックスサイズの電子ガンを実現した。電子ガンは、生体分子から超伝導まで、様々な物質の研究のための高品質電子ビーム生成に使用される。また、X線自由電子レーザを駆動するリニア粒子加速器の電子源でもある。
 DESY研究者、ハンブルク大学教授、Franz Kärtner氏は新しい電子ガンをOptica誌に発表した。
 新デバイスは、通常のRF場の代わりにレーザで生成したテラヘルツ放射を利用して、電子を加速した。テラヘルツ放射の波長は、RF放射よりもはるかに短いので、デバイスは大幅に縮小できる。最先端の電子ガンは自動車サイズであるが、この新しいデバイスはわずか34×24.5×16.8㎜である。
 MITのDr. W. Ronny Huangによると、放射ガイドに使用される材料はRF波長に比べて、テラヘルツ波では、極めて高い場の影響を受けやすいので、テラヘルツ放射は電子の「叩きだし(kick)」が遥かに強い。つまり、電子ビームは極めて高輝度、短波化する。エネルギーの広がりが狭く、高荷電で低ジッタの超短電子ビームは、例えば金属の相転移、半導体や分子結晶を分解す超高速電子回折実験では不可欠である。
 「われわれのデバイスはナノメートルの銅薄膜である。背後からUV光を照射されると、短い電子のバーストを出す。テラヘルツ周波数によるレーザをデバイスに照射すると、デバイスは照射を導波するように特別に調整されたマイクロ構造を持っているので、電子に対するインパクトが最大化される」とHuangは説明している。この方法でデバイスは、350MV/mの加速パワーに達した。「加速場は、現在の最先端のガンと比較してほぼ2倍だった。25万電子の高密度パケットを加速し最小のエネルギー広がりで0.5keVに達した。これにより、デバイスから出てくる電子ビームは、すでに低エネルギー電子回折実験に使える」と同氏はコメントしている。
 実験セットアップでは、大きなCFELラボを使用した。銅薄膜から電子をたたき出すために使ったUV光は、テラヘルツ放射加速と同じレーザから生成している。「これにより、絶対的な時間同期が保証され、ジッタは大幅に減った」(Huang)。デバイスは、少なくとも10億ショットで安定動作し、毎日の運用が容易になっている。
 「電子ガンが小型化し性能が向上すると、光合成に関わる分子を含め、生物学者のマクロ分子機械の複雑な働きの観察改善が可能になる。また、物理学者にとっては複合材料における基本的な相互作用過程の理解向上が可能になる」(Kärtner氏)。
「さらに、電子ガンはX線光源ファシリティの重要な構成要素である」。相対論的エネルギー、10fsの超短、超高輝度電子バンチを生成する次世代テラヘルツ電子ガンは現在、CFELで開発中である。「このようなデバイスは、プログラムAXSIS内で建設されるアト秒テーブルトップ自由電子レーザ用のフォトインジェクタとして利用されることになる」とKärtner氏は説明している。AXSIS (frontiers of Attosecond X-ray Science-Imaging and Spectroscopy)は、アト秒X線科学イメージングと分光学。
(詳細は、www.desy.de)