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MIPTなどのチーム、型破りのシリコンナノアンテナを開発

November, 30, 2016, Moscow--ITMO大学、MIPT、テキサス大学オースチン校の物理学チームは、入射光の強さに依存して光を特定の方向に散乱させる型破りのナノアンテナを開発した。研究成果は、通信システムにおける柔軟な光情報処理の開発に役立つ。
 フォトンは質量も電荷もないので、光は相対的に制御しにくい。最先端の光操作を必要とする分野の1つに、光コンピュータの開発がある。このような機器では、情報は電子ではなくフォトンで運ばれる。荷電粒子の代わりに光を使うことは、情報伝達と処理の速度を著しく改善する可能性がある。こうしたコンピュータを実現するには、特殊なナノアンテナが必要になる。例えば一定の電界、磁界を与えることで、あるいは入射光の強度を変えることで操作することができるような特性を持つアンテナである。
 研究チームは、入射光の強度に依存して光の散乱方向を変えることができる、新しい非線形ナノアンテナを設計した。提案したナノアンテナの中心にはシリコンナノ粒子が存在する。これは強いレーザ照射により電子プラズマを発生する。研究チームは、入射光の強度を変えることで、散乱光ビームを望む方向に変える方法を見出した。
 ナノアンテナの放射パタンを回転させるために、研究チームは、シリコンのプラズマ励起のメカニズムを利用した。ナノアンテナはダイマ、つまり直径が異なる2つのシリコンナノスフィアである。弱いレーザビームを照射すると、このアンテナは、非対称形状のために、光を横に散乱させる。2つのナノアンテナの直径は、1つの粒子がレーザ光の波長で共鳴するように選択している。強いレーザパルスで照射すると、共鳴粒子に電子プラズマが発生し、これによって粒子の光特性に変化が生ずる。他方の粒子は非共鳴のままであり、強力なレーザ場はそれにほとんど影響を与えない。一般に、入射ビームのパラメータと組み合わせて両粒子の相対サイズを正確に選択することで、粒子のサイズを実質的に同じにすることができ、これによってアンテナは光ビーム前方にはじき返すことができる。
 「われわれのナノアンテナは、動的に変更可能である。それを弱いレーザインパルスで照射するとある結果が得られ、強いインパルスで照射すると結果は全く異なる」と論文の筆頭著者のMIPTのDenis Baranov氏は語っている。
 研究チームは、光散乱メカニズムの数値モデリングを行った。ナノアンテナを弱いレーザビームで照射すると、光は横に散乱することがシミュレーションにより示された。しかし、強いレーザパルスでは、デバイスの内部に電子プラズマが生じ、散乱パタンは20°回転する。これにより、弱い入力インパルスと強い入力インパルスを異なる方向に曲げることができる。
 論文は、Laser & Photonics Reviewsに掲載されている。