October, 27, 2016, München--ヘルムホルツセンタ・ミュンヘン(Helmholtz Zentrum München)とミュンヘン工科大学(Technical University of Munich)は、新しいイメージング法をLight: Science & Applicationsに発表した。新しいイメージング法は、現状は小動物の脳の規模の大きな神経回路の活動をリアルタイム、3D観察できる。
現在、ほとんどの脳機能は単一のニューロンの観察では理解できないことは周知のとおりである。意味のある前進には、神経科学者は何百万のニューロンの活動を、個別、集合的の両方でモニタする必要がある。しかし、これまではそのような観察は不可能だった。生きた脳に対する光学顕微鏡の浸透度が限られているためである。
研究チームは、こうした課題に対処する新たな方法を見出した。新しい方法は、いわゆる光音響学をベースにしており、非侵襲的にセンチメートルスケールの深さで生きた組織を調べることができる。
論文の筆頭著者Dr. Xosé Luis Deán-Benは、「光音響学は神経活動の結果から得られるカルシウムイオンの濃度差に感度があることが分かった。非常に多くのニューロンからの信号を同時に記録できる迅速機能光音響神経トモグラフィ(FONT)システムを考案した」と説明している。遺伝的に符号化されたカルシウム指標GCaMP5Gを表示する成熟したゼブラフィッシュの脳で研究チームが行った実験は、光音響学を使って神経ダイナミクスを直接追跡する基本的な能力を初めて実証した。ここでは、不透明な脳で光イメージングの年来の浸透問題は克服されている。この技術により、動物の制約されない動作中に神経活動を追跡することができた。
研究リーダー、Prof. Dr. Daniel Razanskyによると、研究チームは、成熟した動物の脳全体のリアルタイム分析を2×3×4㎜(約24㎜3)サイズで行った。最先端の光学顕微鏡法では現在、高速神経活動のイメージングとなると、イメージングできるサイズは1㎜3以下に限定される。さらに、FONT法は、時間分解能10ミリ秒(ms)で1000㎜3以上のサイズを可視化できる。
神経活動の大規模観察は、正常と病気の両方で脳の活動の仕方を理解する決め手になる。