February, 28, 2014, Washington--IBMの研究チームは、マルチモードファイバ(MMF)でデータ伝送の新記録を達成した。この研究成果は、短距離でデータを伝送する標準的な既存技術で、この先10年のサーバ、データセンタ、スーパーコンピュータのニーズに応えられることを示した(1)。
57mのケーブルでVCSELを使った64Gbpsのデータ伝送は、これまでの記録を約14%上回っており、現在の一般的な商用技術と比べて約2.5倍高速になる。
データ伝送には、標準的なNRZ変調を採用。IBMワトソン研究所の研究員、Dan Kuchta氏によると、この変調方式では32Gbps以上は無理だと考えられていた。多くの研究者は、伝送レートを上げるには、例えばPAM-4のようなもっと複雑な変調方式が必要だと考えていた。
「われわれは、それは全く正しくないことを示した。この技術は、少なくとも1~2世代の製品寿命を持っている」と同氏はコメントしている。
このような高速伝送達成のために、研究チームは、スウェーデンのChalmers工科大学が開発したVCSELとIBM研究所が開発したカスタムSiGeチップを使用した。「受信用チップは、現在商用化されているものを遙かに超えるスピードと感度を同時に達成した独自の設計。ドライバチップは伝送イコライゼーションを組み込んでおり、これによって光リンクの帯域が拡張できる。この方法は電気通信では広く用いられているが、光通信ではまだ受け入れられていない」。
さらにKuchta氏は、「研究者たちは、使えるデータ転送レートは帯域幅の約1.7倍であるという経験則に依拠している。つまり、約26GHzの帯域幅を持つVCSELレーザでは、伝送レートは約44Gbpsにしかならない。われわれがイコライゼーションでやろうとしていることは、過去の経験則を破ることだ」と言う。
この高速性は57mの距離でしか使えない。したがって、この技術は大陸を横断するような設計ではない。ビル内のデータ伝送に最も適している。データセンタのケーブルの約80%、典型的なスーパーコンピュータ向けケーブルの全部ではないが、そのほとんどは50m以下である。
この新技術は、直ぐにも商用化できる段階にある。
(詳細は、OFC 3月14日1:30 p.m. room 121で発表)
参考
(1) Th3C.2, titled “64Gb/s Transmission over 57m MMF using an NRZ Modulated 850nm VCSEL,”