August, 17, 2016, 豊橋--豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系の後藤太一助教、自黙科学研究機構分子科学研究所、アイオワ州立大学の研究者らのグループは、共同で磁場と光の相互作用である磁気光学効果を発現する膜を用いた、集積化可能なQスイッチレーザの開発に世界で初めて成功した。成果は小型高出力レーザの発展に寄与する。
高出力、高繰り返し、高安定な小型レーザは、日々の製造プロセスを、よりシンプルで、低コスト、スピーディーなものに変えうると期待されている。ドイツでは、製造現場のデジタル化(高産構報化)がもたらす製造業の変革をインダストリ4.0と名付け、全工程の制御自動化が1つのキーポイントとなってきている。レーザ加工はこれに大きく寄与する可能性がある。小型高出カレーザの適用先は、これにとどまらず、自動車エンジンの点火プラグや、宇宙開発用スラスターシステムでの利用など多岐に渡る。
しかし、これまで、レーザが出るタイミングや、繰り返し回数などが、制御可能で集積化可能な国体レーザ向けのQスイッチ素子は無く、開発が切望されていた。制御可能なQスイッチ素子は、電気光学素子や音響光学素子が広く知られていたが、光学素子の付属が必要であったり、分厚い結晶を用いる必要があったりと、原理的にミリメートル以下の小型化が不可能だった。さらにどちらも複雑かつ大型の制御電源が必須であり、小型レーザ本体のコンセプトに適さないものだった。
研究者グループは、迷路状の磁気ドメインを持つ厚さ190µmの透明磁性材料を用いて、初めて、膜のQ スイッチ開発に成功した。磁気ドメインとは、磁石のN極とS極が膜の面の中にランダムに点在することによって生じるもので、磁気のまだら模様と表現できる。実験では、高速磁気パルスを、透明磁石材料に印加し、パルス幅45ナノ秒(ns)、ピーク値約20Wの、Qスイッチレーザの取得に成功した。世界で初めての、集積化可能な磁石材料を使った初のQスイッチレーザである。
さらに、磁性体の強みを活かし、小型永久磁石を、透明磁石材料の近くに設置することで、レーザパルス発生に必要な電流を、7分の1にまで、低減できることを実験によって示し、チップに収まる程度の小型の制御回路で、同機能が実現できることも示した。研究成果は小型高出カレーザの発展に大きく寄与することが期待される。
(詳細は、www.tut.ac.jp)