August, 2, 2016, Moscow--MIPT(モスクワ物理学・技術研究所)の研究チームは、新しいコンパクトで強力なセラミックベースのレーザを開発した。これは、手術用の最小衝撃で安価なレーザ・メスとして使える。また、複合材料の切断、エッチングにも使える。
MIPT研究者、Ivan ObronovとRAS(ロシア科学アカデミー)応用物理学研究所、IRE-Polus社のチームは、希土類元素、ツリウムイオン添加酸化ルテチウム(Tm3+:Lu2O3)化合物から得たセラミックを使った。セラミックにレーザ発光させたのはツリウムイオン。
「セラミックは、焼結用粉末で多結晶塊が作製されるので、レーザ媒体向けに有望なタイプである。また、単結晶に比べて安価で製造も容易、この点は大量普及には極めて重要。さらに、セラミックの化学成分は容易に変えられる、つまりレーザ特性が変わるということである」とObronov氏は説明している。
開発されたレーザは、50%を超える効率でエネルギーを放射するが、固体レーザの 他のタイプの効率は20%程度、また発振波長は2µm付近の赤外(1966~2064nm)である。この波長域のレーザは医療目的で極めて有用である。
「最も一般的な赤外レーザ、1µm波長は非常に吸収が少なく、生体組織に深く浸透する。そのため、凝固や広い範囲の壊死が起こる。医療用メスは特定の深さで動作する必要があり、2µmレーザが使われる理由がここにある。つまり、そのようなレーザは、深部組織に損傷を与えないからである」とObronovは説明している。
同氏によると、医師は通常2µmのフラッシュランプ励起ホルミウムレーザを使うが、このようなデバイスは非常に高価であり、相対的に大きく、極めて信頼性が低い。「セラミックレーザは、非常に強力な競争優位性を持つ。製造が簡単で、簡素、高信頼、ホルミウムレーザよりも4倍もコンパクトにできる。医療用途に最適である」と同氏はコメントしている。
セラミックレーザの別の潜在的アプリケーションは、複合材料産業。広く利用されている1µmレーザは、金属の切断で優れているが、ポリマはそのレーザに対して実際的に透明である。2µmセラミックレーザは、それに対して、複合材料など、プラスチックを効果的に切断、エッチングできる。