August, 1, 2016, Bitterfeld--赤外線放射の主源は熱、原子の運動や物質の分子を含め、物質における荷電粒子の熱運動によって起こる輻射である。物体の温度が高くなればなるほど、原子や分子の振動、回転、振動モードによる捻じれ、放射する赤外線放射がますます多くなる。
赤外検出器は、それ自体の熱で「ブラインド」になっているので、高品質の赤外センシングやイメージングデバイスは通常冷却される。絶対零度の数℃上まで冷却されることもある。そのようなデバイスは非常に高感度であるが、冷却が必要なハードウエアは、デバイスが決して動かないようにし、エネルギー効率を低くし、アプリケーション領域を制限する。
Optics Expressに発表された論文は、新しいタイプのポータブルな、フィールドで使いやすい室温動作の中赤外ディテクタについて論じている。室温動作は、TU Wienマイクロ、ナノ構造センタ、Andreas Harrerによると、「ディテクタがポータブルなハンドヘルドアプリケーションには、重要な点である。われわれは、設計の柔軟性があり、コンパクトな集積タイプの現場適用検出システムのすべての要件を満たす赤外線検出技術に道を開きたかった」と話している。
Harrerのチームが開発した測定器のタイプは、量子カスケードディテクタ(QCD)として知られている。QCDは半導体で構成される高速ディテクタで、赤外光の特定の波長を感知し、その光を対応する電気信号に変換する。研究チームが説明している、設計上の独自性は、最高性能のQCDで8×8アレイ構成としている点。ピーク応答チューニングは、井戸とバリアの寸法を4.3µm波長に特別に調整することで達成される。
QCDで使用されるピクセル数は、Harrerによると、簡単に拡大できる。「利用している成長とプロセス技術は、もっと大きなアレイ寸法、より小さなピクセルサイズにも適用し、拡大できる。将来的に、コスト効果が優れていて高分解能のイメージングデバイスを実現するために、この点は重要である」と同氏はコメントしている。
QCD素子で検出される4.3µm波長は、CO2分子が赤外放射を吸収する3つの狭い波長域の1つを示している。そのデバイスで想定される将来のアプリケーションは、「例えば、呼気のCO2含有量をベースにして被災者を発見する無人探査や救助ロボット」であるととHarrerは話している。
4.3µm波長も、いわゆる中赤外領域に入る、これも電磁スペクトルの科学的「フィンガープリント」領域と言われている。多くの化学物質の回転-振動吸収スペクトルが、この波長域で見つかっている。言い換えると、この波長域に入る赤外放射を分子が吸収するとき、分子はこれらの分子をさらに高い振動状態に励起する。そこでは分子は、特有の特徴的なパタンで回転、振動する。それが特徴的な「フィンガープリント」を中赤外スペクトルに刻印する。これは特異的な化学種特定に使うことができる。4.3µmで遠隔センシングの強化された検出の潜在力は、Harrerのチームが発表したスペクトル的に狭い領域のQCDで有望である。
(詳細は、”4.3 μm quantum cascade detector in pixel configuration,” Opt. Express 24, 17041-17049 (2016). DOI: 10.1364/OE.24.017041.)