July, 27, 2016, 和光--理研、MIT他の国際共同研究グループは、超伝導回路上に「人工Λ(ラムダ)型原子を実装し、その特性を応用することで、「マイクロ波単一光子」の高効率検出を実現した。
超伝導回路によって構成される超伝導量子ビットは、次世代のコンピュータとして期待される量子コンピュータの最も有力な最小構成要素として注目されている。超伝導量子ビットの制御や状態の読み出しには、その励起エネルギーに近いマイクロ波(周波数:数GHz~数十GHz)が用いられる。マイクロ波の“量子”であるマイクロ波光子の高効率検出や生成といった基盤技術は、量子コンピュータの早期実現やマイクロ波量子光学の発展に貢献すると期待されている。しかし、量子暗号通信[5]分野などで用いられる近赤外光子(周波数:数百THz)と比較して、エネルギースケールが4~5桁小さなマイクロ波光子の高効率検出は、これまで困難を極めてきた。
共同研究グループは、超伝導量子ビットの一つである磁束型量子ビットとマイクロ波共振器[7]がコンデンサを介して結合した実験系を作製し、量子ビットに適切な周波数・強度をもつ外部電磁波を照射して人工Λ型原子を実装した。このΛ型原子に共鳴する信号マイクロ波光子を入射し、誘起されるΛ型原子の状態遷移を検出することで、マイクロ波単一光子を高効率で検出することに成功した。マイクロ波単一光子の検出効率は66±6%に達し、この効率は現在のところ世界で最も高い数値となっている。
今後、マイクロ波単一光子の高効率検出技術は、マイクロ波光子を用いた量子通信や量子情報処理、さらには量子コンピュータへの応用が期待できる。
国際共同研究グループは、理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター超伝導量子エレクトロニクス研究チームの猪股邦宏研究員、中村泰信チームリーダー(東京大学先端科学技術研究センター教授)、東京医科歯科大学の越野和樹准教授らで構成。
(詳細は、www.riken.jp)