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VTT、呼気からヘリコバクタの無痛、迅速、高信頼診断法を発表

June, 22, 2016, Veldhoven--将来、病気によっては、呼気に含まれる同位体の光学的分析により迅速かつ無痛で診断できるようになる。VTTは、この目的で最初のプロトタイプを開発した。
 そのデバイスを用いて、患者の胃の病気がヘリコバクタによるものであるかどうかを選定中に無痛で絶対確実に判定できる。デバイスの確度は、呼気中のカーボン13(13C)だけでなく酸素18(18O)の計測能力に基づいている。
 この発明は、VTTのMIKES計測学によって開発された技術をベースにしている。マルチパスチャンバ内の光的吸収分光法では、試料容量は、大人の肺活量の1000万分の1以下、わずか40マイクロリットルとなる。試料容量が極めて微量であるため、チャンバ内の気体は素早く交換できる。したがって、患者の全呼吸周期を同じデバイスで迅速に分析できることになる。
 呼吸する空気をベースにした診断法は、増加する傾向にある。ヘリコバクタ(ピロリ菌)だけでなく、呼吸する空気を利用して人のエネルギー消費、体重減少、早期のタイプ2糖尿病、敗血症の分析にも使える。敗血症は、病院に多額の負担をかけることになり、外科手術後の主な死因の1つになっている。
 VTTは、他の病気の診断のためのデバイスの開発を目的に、追跡プロジェクトを計画している。同デバイスは、タンパク質や様々な化学物質の分析にも使える。酸素17も計測可能である。デバイスは完全に安全な安定同位体を計測するので、食品業界でも使用可能である。
 アナライザは、患者のそばに置いて24時間体制で動作可能であるので、外科手術を受けた患者、意識不明の患者にも応用可能である。正確な特殊データを呼吸周期ごとに採ることができる。
 VTTのプロトタイプは、コンピュータ、ポンプとオプティクスを含んでおり、ボタン一つで始動し、ワイヤレスでタブレットやスマートフォンと通信し、計測結果は直ちにディスプレイに表示される。
 呼気分析に基づく現在の商用デバイスは、95~98%の信頼度で結果を提供するが、これは胃カメラ検査でその結果を確認しなければならないことを意味する。VTTが開発したデバイスは、分析から誤判定を排除するという利点がある。発表論文によると、呼気から炭素13に加えて酸素18が分析される際に、100%の分析精度が達成できる。現在の商用呼気アナライザは、炭素13の分析だけである。

患者とスタッフの両方に容易な方法
 二酸化炭素は、様々な量の炭素原子で構成されている。気体の起源は、これらの炭素同位体を計測することで判定できる。尿素分子の炭素12が人工的に炭素13に置き換えられる際に、ヘリコバクタは、呼気に検出できる。この置き換えは、尿素薬品を含む無害な薬剤を患者が飲み込むことによって行われる。胃にヘリコバクタが存在すると、尿素分子が二酸化炭素分子に分解され、それが患者の器官に入り、最終的には肺から呼気に入る。
 VTTが開発したデバイスは、呼気の炭素13と炭素12の割合を分析する。薬剤を飲むと、呼気の炭素13比率が増加し、97%の確度で患者がヘリコバクタに罹っていることが分かり、薬による処置ができる。VTTのデバイスの違いは、呼気内の酸素18の比率も分析することであり、これにより診断の100%確かさが保証される。