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イオンビームで正確にシリコンに原子を埋め込む

June, 9, 2016, Albuquerque--サンディア国立研究所(Sandia National Labortories)は、膨大な数の計算を同時に行う実用的な量子コンピュータ実現に第一歩を踏み出した。イオンビームによって「ドナー」原子を非常に正確に業界標準シリコン基板にマイクロ秒で挿入する。
 ドナー原子、ここではアンチモン(Sb)は、シリコン原子(4個)よりも電子の数(5個)が1個多い。電子は対になるので、Sb奇電子は、自由のままとなる。
 電磁場からの圧力を受けて自由電子が上向き下向き、つまり「スピン」するかどうかを判断するために、測定装置で自由電子をモニタする。この場合の電子、つまりqubitsは、サブアトミックスケールで「イエス」または「ノー」の信号を出し、量子コンピュータの情報キャリアとして動作する。
 ドナー原子をシリコンに正確に埋め込むには、2番目のドナー原子を十分に離して挿入できなければならない、これは、通信が距離によって失われることも、近すぎて弱められることもない、「Goldilocks」ゾーンを意味する。サンディアの研究チームは、これを今年後半に試みると主席研究者、Meenakshi Singhは話している。相互に「話をする」qubitsは、量子コンピューティング回路の基盤である。
 Applied Physics Lettersに報告されたサンディアの第1段階成功は、予め埋め込まれた近傍の量子ドットによって提供される電磁力を利用している。量子ドットは、多様なエネルギーレベルがあり、qubitをブロックしたりパスしたりするトランジスタのように動作する。
 利用できるエネルギーレベルが電子に適合すると、そのトランジスタゲートは効果的に開いて電子がドットに飛び込む。そうでなければ、qubitはそのままの状態にとどまる。この動作は、フォトンの動きよりも電流に感度があるフォトダイオードセンサによって表面に情報が戻される。量子ドットには多数の「ゲート」があるので、多様なエネルギーレベルの多数のqubitsがトランジスタを通過したり、阻止されたりする。理論的には、非常に多くの情報処理が可能になる。
 「われわれの方法は有望である。と言うのは、それが電子の電荷ではなくスピンを読むからである。その情報は背景静電気に飲み込まれることなく、代わりに、比較的長時間コヒレントな状態にとどまるからである。また、われわれはシリコンを基本材料として使う。シリコンは、商用製造技術がすでに発達している。高価な超伝導コンポーネントは使わない」とSinghは言う。
 サンディアの方法の第3の独自の特徴は、ドナー原子を正確に迅速にしかるべき位置に埋め込めること。ターゲットのナノメートル以内にマイクロ秒で挿入することができる。Goldilocks距離に対する統計的平均にqubitを置くような当てずっぽうではない。
 実験のコンポーネントのデモは以前に行ったが、全てがシングルチップ上でともに動作するのは初めてのことである。研究者は、各qubitの垂直的、水平的位置を正確に認識しており、単なる統計的な近似ではない。
 「サンディアの技術は、もっと複雑なマルチqubit構造の製造を可能にし、既存のドナーインプラントアプローチよりも高収率である」論文の著者、Mike Lillyはコメントしている。