June, 3, 2016, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、ストックホルム大学との共同研究により、大腸菌中の大きなタンパク質の複合体が、細胞分裂の後、どのように分解するかを世界で初めて示すことに成功し、この研究結果が Molecular Microbiology 誌に掲載された。
「OIST研究員で論文筆頭著者のビル・セダーストゥル博士はタンパク質複合体の形成は今までかなり研究されてきた。しかし、分解プロセスはほとんど知られておらず、われわれも分解プロセスがランダムなものか、あるいは高次構造が関わっているのか、知りたいと思っていた」と語っている。
このタンパク質複合体の中で何が起きているかを視覚化するため、研究チームは蛍光タンパク質を用いてdivisomeを発現させた。さらに従来の光学顕微鏡よりはるかに微細な物質を識別できる特別な超解像度の顕微鏡を使用し、一対のタンパク質複合体において、いつそれぞれのタンパク質が分解するかを観察した。こうして研究チームはタンパク質複合体の分解が、先入れ先出しの原則に基づく形成プロセスに非常に類似した制御された形で起きていたことを発見した。
OIST構造細胞生物学ユニットのウルフ・スコグランド教授は「研究では、タンパク質がどの順番で分解するかを示している上、このプロセスはまた再現可能であり、様々な事象がどのような順番で起こっているかを見極めるのに非常に役立つ」と話している。
研究成果の技術を用い、タンパク質が複合体の中でどのように形成されていくかをまず観察することができるようになった。さらに大きなタンパク質複合体において、異なるタンパク質グループが、グループのリングの内側と外側でどのように相互作用をするかもある程度理解できるようになった。リングタンパク質や秩序だった分解プロセスを知ることにより、研究チームは個々のタンパク質がバクテリアのどこに存在するか、どのタイミングでタンパク質同士の相互作用が停止するかを突き止めることができた。これらの情報を統合すると、今回の研究の発見は、バクテリア分裂の構造と機能の完全理解に向けて、一歩前進したことになる。
スコグランド教授は「バクテリア分裂のステップをより効率よく把握していれば、より多くの成分に何らかの働きかけを行うことができる。そうすれば、より重要で機能的な部分に焦点をあて、バクテリア分裂のシステムに相互作用を起こさせる選択肢を増やすことができる」とコメントしている。
世界では抗生物質に耐性のあるバクテリアが脅威となっており、このような情報は、有害バクテリアに対する新たな攻略法を生み出すため非常に有効である。バクテリア分裂機構における構造と機能を理解することにより、何をどのタイミングでターゲットにすればよいかを見極めるのに役立つはずである。
セダーストゥル博士は「タンパク質複合体に関するこの新たな知見は、有害バクテリア対策として本当に有効である」と強調している。
(詳細は、www.oist.jp)