April, 8, 2016, Gaithersburg--NISTの研究チームは、光波、音響波、電波の間で信号を変換する「ピエゾ-オプトメカニカル回路」を開発した。この設計に基づいたシステムは、次世代コンピュータにおいて情報を移動させ、蓄積できる。
ムーアの法則は著しく回復力があることを証明しているが、エンジニアはすぐに基本的な制限に直面し始める。トランジスタが縮小するにともない、熱や他の要素が原因となって、回路では効果の悪化が始まる。その結果、研究者はますます、光や音など、情報を運ぶ他の物理的なシステムと電子部品とを結びつける設計を考えるようになる。このような異なるタイプの物理システムを結び付けることで、1つのタイプの情報キャリアに依存するコンポーネントの問題の一部を回避できる。ただし、研究者が1つのタイプから別のタイプへ信号を変換する効率的な方法を開発できればと言うことである。
例えば、光は大量の情報を運ぶことができ、一般に環境との強力な相互作用はないので、電気のようにコンポーネントを加熱することはない。とは言え、光は有用ではあるが、すべての状況に適しているわけではない。光を長期蓄積することは難しい。また回路には光と直接相互作用できないコンポーネントもある。一方、音響波デバイスはすでにワイヤレス通信技術で用いられており、音の移動速度は遥かに遅いので、コンパクトな構造で容易に音を蓄積できる。
そのようなニーズに対処するためにNISTの研究者と提携者は、チップ上にピエゾ(圧電)オプトメカニカル回路を作製した。この回路の中心にはオプトメカニカルキャビティがあり、それはナノスケール懸架ビーム(梁)で構成されている。ビーム内には、一連の穴があり、それはフォトンにとってミラーホールのように機能する。特殊な色、つまり周波数のフォトンが、漏れるまでにそのミラーの間を何千回も跳ね返る。同時に、ナノスケールのビーム(梁)がフォトン、つまり機械的振動を、GHzの周波数で閉じ込める。フォトンとフォノンはエネルギーを交換する。ビームの振動がキャビティ内のフォトンの蓄積に影響を与えることが目的である。他方、キャビティ内のフォトンの蓄積は、機械的振動のサイズに影響を与える。この相互作用の力、結合は、オプトメカニカルシステムで報告されたもので最大のものの1つである。
研究チームの主要イノベーションの1つは、このようなキャビティと音響導波路の結合から来ている。この導波路は、音波を特定の場所にルーティングするコンポーネントである。フォノンをオプトメカニカルデバイスに向かわせることによって、グループはナノスケールビームの運動を直接操作することができた。エネルギー交換によりフォノンはデバイスにトラップされた光の特性を変えることができる。GHz周波数(聞こえる音よりもはるかに高く、犬でも聞き取れない周波数)の音波を生成するために、研究グループは、圧電材料を利用した。これは、電界がかけられたり、その逆の場合、変形する。この圧電効果を強める、インターデジタル変換器(IDT)として知られる構造を使うことで、グループはRF電磁波と音響波との間にリンクを確立することができた。強力なオプトメカニカルリンクにより、この閉じ込められたコヒレント音響エネルギーをわずかなフォノンのレベルまで光学的に検出することができる。
また、電気的、光学的に生成されたフォノンを相互に対抗させることによって、音波において制御可能な干渉効果を観察できた。論文の著者の1人、Kartik Srinivasanによると、そのデバイスによってこのような相互作用の詳細な研究、フォトンを用いて変更可能なフォノン回路の開発ができる。
「将来の情報処理システムは、適切な方法で多様な作業を実行するために、他の情報キャリア、例えばフォトンやフォノンを組み込む必要があるかもしれない。今回の成果は、そのような異なるキャリア間の情報変換のための1つのプラットフォームとなる」と同氏はコメントしている。