March, 30, 2016, 東京--東京理科大学国際火災科学研究科 松山賢准教授は、日本電信電話(NTT)と共同で、煙霧環境での視認性確保を可能とするテラヘルツ波照明器の基本構成技術を開発し、見通しが全く利かない模擬火災環境でも、試作した原理検証用のアレイ型照明器で照らすアクティブイメージングにより1.4m先にある被写体のテラヘルツ像が取得できることを実証した。
従来、煙霧環境下で視界を確保する技術は無く、見通しが利かない状態で火災現場の状況を把握することは非常に困難だった。この照明技術の実現により、光並みの空間分解能を有し、電波のように煙を透過するテラヘルツ波を、通常のカメラにおけるフラッシュ光のように用いることが可能となり、煙がある空間でも、テラヘルツイメージによってその中の状況が視覚的に認識できることになる。これにより、火災時の建物内の逃げ遅れ者の救助・検索活動の精度向上が期待される。
東京理科大学 松山賢准教授はNTTと共同でテラヘルツ波照明器の基本構成技術を開発した。この技術の中核は、燃焼により生成するガスによる吸収の影響が避けられる波長360ミクロンのテラヘルツ波の位相を意図的に乱し、複数配置した素子から発生するテラヘルツ波を束ね、その強度を高めるところにある。これによりテラヘルツ波をカメラにおけるフラッシュ光のように利用することが可能になった。原理検証用に試作した9個の素子から成るアレイ型照明器を用いたアクティブイメージングの能力を、火災を模擬した空間で評価し、煙霧により全く見通しが利かない状態で、1.4m先にある被写体のテラヘルツ像の取得に成功した。
テラヘルツ波イメージングでは、煙で区画内が全く見通せない状態(Cs = 9)でも被写体のTの字が明瞭に視認できることが図より見て取れる。これに対して、赤外線のアクティブイメージングでは煙がおよそ半分ぐらいの濃度(Cs = 5.2)でも、被写体が全く認識できなくなっている。
この結果は、アレイ型照明器を用いてテラヘルツ波で被写体を照らすアクティブイメージングが、煙霧により見通しの利かなくなる火災現場での視認性確保に有効であることを示している。
研究チームは、建築火災安全工学の観点から、今回開発したテラヘルツ波照明器の性能を見極め、見通せる距離の延伸、システムの小型化などの研究開発に取り組む。