January, 21, 2016, Karlsruhe--蛍光材料として銅を利用することで安価で環境に優しいOLEDの製造が可能になる。
熱的に活性化された遅延蛍光(TADF)が高光収量を保証する。KIT(カールスルーエ工科大学)、CYNORAおよびセントアンドルー大学(University of St Andrews)の研究者は、銅錯体系間交差(ISC)の基盤となる量子力学現象を計測した。この基本的な研究の成果は、Science Advances誌で、OLEDのエネルギー効率向上に寄与すると報告されている。
OLEDは、有機材料の超薄型層でできており、それは2つの電極間エミッタとなる。電圧を印加するとカソードの電子とアノードのホールがエミッタに放出され、そこで電子-ホール対が形成される。これらの励起子は、励起状態における準粒子である。減衰して再び初期状態に戻るとき、それらがエネルギーを放出する。
励起子は2つの異なる状態を取りうる。シングレット励起子は直ちに減衰して発光するが、トリプレット(三重)励起子は熱の形でエネルギーをを放出する。通常、OLEDでは、25%のシングレットと75%のトリプレットが出会う。OLEDのエネルギー効率を高めるには、トリプレット励起子も発光に使用しなければならない。従来の発光ダイオードでは、その目的のためにイリジウムやプラチナなどの重金属を加えている。しかしこれらの材料は高価で希少であり、さらに複雑なOLED製造法を必要とする。
エミッタ材料として銅錯体を使用すると安価で、より環境適合的になる。TADFは高光収量、したがって高効率を保証する。トリプレット励起子は、フォトンを発するシングレット励起子に転換される。TADFは、系間交差の量子力学的現象を基盤にしている。つまり1つの電子励起状態から別の多重度の違う状態への転移、例えばシングレットからトリプレット、その逆。有機分子では、このプロセスはスピン軌道結合によって決まる。これは、電子のスピンによる、原子内の電子の軌道角運動量の相互作用である。このようにしてすべての励起子、トリプレットとシングレットは、光の生成に使用できる。TADFにより、銅発光体は、100%の効率を達成する。
KITのIOC(Institute of Organic Chemistry)のStefan BräseとLarissa Bergmannは、OLED技術企業CYNORAおよびUKのセントアンドルー大学の研究者と協力して、高発光性TADF銅錯体 ISC速度を固体で初めて計測した。シングレットからトリプレットへのISC時定数は27psだった。逆のプロセス、トリプレットからシングレットはそれより遅く、TADF継続は平均11.5µs。これらの計測は、TADFにつながる機構の理解向上になり、エネルギー効率のよいOLEDのためのTADF材料の特殊開発を促進するものとなる。