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癌幹細胞の遺伝子活動を変える薬剤を送達するナノボム

December, 18, 2015, Ohio--オハイオ州立大学コンプリフェンシブガンセンター(OSUCCC-James)の研究チームは、近赤外レーザ光を受けて膨らみ破裂するナノ粒子を開発した。
 そのような「ナノボム」は、生物学的障壁を克服する可能性がある。そのような障壁は、ガン細胞の遺伝子活動、つまり発現を変えることで機能する薬剤の開発を阻んでいる。その薬剤は、ガン細胞を完全殺す、あるいは成長を止める可能性がある。
 遺伝子発現を変える薬剤の種類は一般にRNAの形態であり、これは薬剤として使うのが非常に難しい。まず、それらは血流の中で自由になると直ちに劣化する。この研究では、腫瘍細胞を標的にするナノ粒子にその薬剤をパッケージして、その問題を解決した。
 この研究は、そのナノボムが第2の問題も解決する可能性を示唆している。ガン細胞が通常のナノ粒子を取り込むと、ガン細胞はナノ粒子をエンドソームというコンパートメントに包み込むことがある。これは薬剤分子が標的に届くことを阻止し、薬剤は間もなく劣化する。
 治療薬剤とともに、このナノ粒子は揮発性の物質を含んでおり、近赤外レーザ光を受けるとサイズが3倍以上に膨らむ。エンドソームは破裂し、RNA薬剤を細胞内に散乱させる。
 「ナノ粒子を使ってmicroRNAsのような遺伝子制御薬剤を送達するための大きな課題は、ナノ粒子がコンパートメント、つまりエンドソームから逃れられないことだ。ナノ粒子は、細胞が粒子を取り込むと包み込まれてしまう」とOSUCCC-Jamesの首席研究者、Xiaoming He准教授は説明している。
 「この課題は、炭酸アンモニウムを含むナノ粒子を開発することで解決した。炭酸アンモニウムは、ナノ粒子が近赤外光に晒されると気化する小さな分子であり、これによってナノ粒子およびエンドソームは破裂し、治療RNAを放出する」。
 研究では、研究チームは、人の前立腺がん細胞と前立腺腫瘍を動物モデルで使用した。ナノ粒子は、ガンの幹様細胞(CSCs)を標的にするようにされている。CSCsは治療に抗することがあり、ガン発生と再発で重要な役割を持つと考えられている。
 ナノ粒子内の治療薬剤は、microRNA, miR-34a。これを選んだ理由は、それがCSC生存に重要であり、化学療法や放射線治療抵抗に関わる可能性があるタンパク質レベルを下げるからである。
 ナノ粒子は、炭酸アンモニウムも包み込んでいる。炭酸アンモニウムを気化させる近赤外光は、1センチメートルの深さまで組織に浸透できる。
 さらに深い腫瘍には、低侵襲手術を使って光を送達する。
研究の技術的ポイント
・炭酸アンモニウムを含むナノ粒子は、近赤外光で活性化させられると3倍以上に膨らむ(体温で直径約100nm、43℃で300nm以上になる)。エンドソームは直径150-200nm。
・このナノ粒子はCSCsに極めて近く、通常の人の脂肪由来幹細胞には非常に小さい。
・miR-34aナノボムは、人の前立腺腫瘍を持たせた動物モデルでは腫瘍の体積を大幅に減少させた。