January, 25, 2017, 浜松--浜松ホトニクス、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(NTT-AT)、および日本電信電話(NTT)は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)光スキャナーを応用した、発振波長を時間とともに周期的に変化させる高安定な波長掃引光源を新たに開発した。今後の市場の拡大が予想されるパワーデバイス用シリコンウエハの厚み計測装置用途に、4月から浜松ホトニクスとNTT-ATの両社が国内の厚み計測装置メーカーに向けてサンプル出荷を開始する。
開発品は、入射してきた光の進む方向を電圧で高速に制御できるKTN光スキャナーを応用して、光共振器内の回折格子に入射する光の角度を制御して時間とともに発振波長を周期的に変化させる、パワーデバイス用シリコンウエハの厚み計測装置に適した波長掃引光源。
3社は、NTTが開発したKTN光スキャナーを応用し、主に生体組織表層の高精細な断層像を撮影する光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)に用いる波長掃引光源の開発、販売において連携してきた。今回、産業分野へ応用を広げ、パワーデバイス用シリコンウエハの製造現場で使用される厚み計測装置向けの波長掃引光源を開発した。
パワーデバイスは、主に電力制御のために自動車、鉄道、変電所などの幅広い分野で使用されており、社会インフラの整備などによる市場の拡大が期待されている。パワーデバイス用シリコンウエハは、一般的に厚さ100µm程度まで高速で研磨するため、高精度な厚み計測装置に使用可能な高安定光源が求められていた。
現在主流のOCTに使われている波長掃引光源は、ミラーを機械的に動かして波長を周期的に変えるため、装置の振動の影響を受けやすくなっている。製造現場で使用するにはこの振動の影響を抑え、長時間の安定的な連続動作を可能にする必要がある。開発品は、入射してきた光の進む方向を電圧で高速に制御できるKTN光スキャナーを用いることで機械的な可動部がなく、振動の影響を抑えられるため、長時間の安定的な連続動作が可能。また、材料の見直しおよび温度制御方法の改良により、光源周囲の温度変化による計測結果への影響を低減し、高い計測結果の再現性を実現している。さらに、KTN結晶に青色LEDを照射すると、KTN光スキャナーの動作が短時間で安定するという性質を利用して、波長掃引光源が安定動作するまでの立ち上がり時間を短縮した。このように、長時間の安定的な連続動作、高い計測結果の再現性、安定動作までの立ち上がり時間の短縮を実現したことで、製造現場での使用が可能となる。また、光源の中心波長を、他の波長と比較して不純物に吸収されにくい1.3µmとすることで、不純物濃度が高いパワーデバイス用シリコンウエハの厚みを高精度に計測できる。
開発品の構成部品である半導体光増幅器は、NTTグループであるNTTエレクトロニクスが開発した。これは、中心波長1.3µmで、気密封止に工夫をして信頼性を高めたものである。
(詳細は、www.ntt.co.jp)