March, 22, 2016--ソシオネクスト(Socionext Inc.)は、一波長あたり100Gbps離散マルチトーン(Discrete-Multitone, DMT)変調方式のトランシーバーIC「MB8AJ2060」を開発した。製品の消費電力は5W以下で、単波長での100Gbps伝送では世界最小となる。
近年、データセンター間の光ネットワーク通信では100Gbpsへの移行が始まっており、この変化はここ数年のうちに急速に進むと予想される。また、無線通信における4Gおよび5Gサービスの提供が光ネットワークにとってさらに大きな負担となっている。このような市場の成長を維持するためには、物理層(PHY)での低コストかつ高効率での伝送と、単一波長で100Gbpsの伝送を実現し、ファイバ容量を最大限に活用することが鍵となる。
伝送効率を向上する手段としては、マルチレベル・シグナリング方式によりシンボルレートを増加させることで、同一のボーレート(Baud rate) でより高いビット伝送速度を達成する方法が考えられる。この方式(1シンボルあたり2ビットの伝送)を利用して一波長あたり25Gbpsを50Gbpsに向上させるのは比較的容易であるが、この方法をさらに進めて100Gbpsを達成するためには、次のステップとしてボーレートを現在の2倍である56GBaudにする必要がある。これは現在広く使われている比較的性能の低い光コンポーネントにとって、特に2~3km以上の距離を伝送する場合には非常に難しくなる。
これに替わる手段は、原理的に低ボーレートでの伝送が可能なマルチキャリヤー変調フォーマットである離散マルチトーン (DMT)方式の採用である。
DMTは、15年以上 にわたって銅配線による高速ブロードバンド伝送の基礎となった強固で実績のある技術。ソシオネクストは、ここ数年間のミックスト・シグナル技術、なかでも高速で低消費電力のアナログ・デジタルおよびデジタル・アナログ変換技術の開発により、アクセス・ネットワークでは従来のブロードバンドの数桁高速となる100GbpsでのDMT伝送を実現できる世界で唯一のベンダ。
光ファイバによる数km~数十kmの伝送においては、ファイバよりもそれぞれのリンク端にあるコンポーネントの性能が通信速度の制約になっていた。
DMTはチャネル特性や干渉に対して柔軟に対応できる性能を有しており、性能の低い安価なコンポーネントを使っているリンクでのデータ転送における様々な問題を解決する理想的な手段である。このことは、DMTがデータセンター間接続や無線バックホール、フロントホールでの要求が高まっている100Gbps光通信の要求に応えることを意味している。
□MB8AJ2060 100G DMT PHY主な特長と仕様
・低消費電力、小フットプリントのコンポーネントを使用したSMF上の伝送向け
・チップ内蔵ハードウェアによる光信号とのアナログ・デジタル変換インタフェース、DMT変調・復調、FEC処理、高速SerDesの電気的インタフェース
・プロトコル非依存 (クライアントデータ信号をパススルー伝送)
-複数の100Gbpsクラスのクライアントをサポート(100GE, ODU4, OTU4, 128GFC)
-クライアント側インターフェースで
CAUI-4/OTL4.4/CPRIをサポート
・フレキシブルなデータ信号速度
-ライン側 (25G, 50G, 100G)
-クライアント側サブレート (4x25G
, 2x50G, 1x75G)
・低レイテンシーのチップ内蔵FEC
を選択可能
・Link Communication Channel (LCC)
-エンドツーエンドリンクネゴシエーションと管理
-ヒットレスで稼働しながらのリンク診断と再構成
・統合CPUサブシステム
-デバイス初期化とリンクトレーニング
-リンク管理と非リアルタイムのDMTアルゴリズム
・チップ内蔵低速DACによる光コンポーネントの制御
(詳細は、www.socionext.com)