December, 9, 2025, 京都--京都大学高等研究院の野田進 特別教授、工学研究科附属光・電子理工学教育研究センターのメーナカ デゾイサ 教授、井上卓也 同准教授、石﨑賢司 同特定准教授、工学研究科電子工学専攻の吉田昌宏 助教らのグループは、スタンレー電気株式会社、日亜化学工業株式会社と、次世代レーザ光源である青色フォトニック結晶レーザ(PCSEL)の早期社会実装を目指した共同研究を 2024 年より推進している。
PCSEL は、従来の半導体レーザに比べて、高い出力と指向性等を兼ね備えた光源である。青色波長領域で動作する PCSEL は、金属の光吸収率が高いため、銅やアルミニウムなどの精密加工に適しており、次世代の製造技術を支える光源として注目されている。
今回、独自のフォトニック結晶構造と最適な電極設計により、発光面の直径を 1mm まで拡大しつつ、0.05 度以下の高指向性ビームの生成に成功した。大型レーザに匹敵する輝度による高エネルギー密度での精密加工が可能となり、実用化に向けた大きな前進となった。
また、共同研究による高指向性ビームの実現により、青色 PCSEL を用いて、水中で 10m 先を精度 1cm以下でセンシングすることに初めて成功した。従来の赤外光やソナーでは困難であった水中センシングを、青色光の高透過性と PCSEL の高指向性ビームにより実現できたことにより、海中の障害物検知や、船舶・橋脚など水中インフラ、漁業などの分野での活用が期待できる。
センシング以外にも、水中での通信や給電分野への展開も可能である。また、車載向けには、雨天や濃霧といった視界不良下での LiDARセンシングへの応用により、自動運転の進展や交通参加者のさらなる安全安心に貢献できると期待される。
<三者の役割>
・京都大学およびスタンレー電気PCSEL素子サンプルの設計・評価・試作全般。また、両者がもつ情報を日亜化学工業に提供し、同社が試作したサンプルの性能評価を実施。
・日亜化学工業
PCSEL素子サンプルの試作および社内評価を行い、その成果物を京都大学およびスタンレー電気に提供。
2024年3月に、三者間で有体物提供契約(MTA)を締結している。今後も、京都大学およびスタンレー電気で培ってきたフォトニック結晶設計・評価のノウハウと、日亜化学工業のレーザ素子製造技術を組み合わせることで、青色PCSELの社会実装に向けた研究開発を加速させるとともに、光技術の新たな可能性を切り拓いていく。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)