October, 28, 2015, Washington--ワシントン大学(University of Washington)とマイクロソフトリサーチ(Microsoft Research)の研究チームは、果物の成熟度を見ることができる安価なカメラ技術を開発している。
コンピュータサイエンスと電気工学のチームは、HyperCam、ローコストのハイパースペクトラルカメラを開発した。HyperCamは、可視光と近赤外光を使って表面下を見ることができ、見えない細部を捉えることができる。このタイプのカメラは一般に、工業アプリケーションで使用されており、コストは数千ドルから数万ドルの範囲にある。
研究チームが発表した論文(UbiComp2015会議)によると、ハードウエアソリューションは約800ドル、携帯電話カメラには50ドル程度で搭載できる可能性がある。また、インテリジェントソフトウエアも開発されており、このソフトウエアを使えば、ハイパースペクトラルカメラが捉えたものと肉眼で見えるものとの「隠された」違いを簡単に発見できる。
例えば、HyperCamが人の手の画像を捉えると、個々人に特有の詳細な血管や肌のきめが明らかになる。これは、ジェスチャー認識から生体認証まであらゆるものに利用でき、同じビデオゲームをプレイしている2人の別人の区別ができる。
生体認証ツールとしてHyperCamの利用の予備調査では、25人の異なるユーザをテストし、同システムがユーザの手の画像を99%の精度で区別できた。
別のテストでは、研究チームは、10種類の異なる果物、イチゴ、マンゴー、アボカドなどを一週間にわたってハイパースペクトラル画像も撮った。HyperCam画像は、94%の正確さで果物の相対成熟度を予測した。一般的なカメラでは、正確さはわずか62%にとどまる。
ワシントン大学、ワシントン研究財団コンピュータサイエンス&工学・電気工学、Shwetak Patelは、「それだけでなく、このハードウエアの作製方法は携帯電話への実装をイメージできる」とコメントしている。
「この種のカメラをもって食料品店に行き、作物の表面下を見る、また内部が腐っていないかどうかを見てどれを選べばよいかを判断することができる。これは正にポケットに食品安全装置を備えることである」とPatel氏は言う。
ハイパースペクトラルイメージングは、人工衛星画像からエネルギー監視、インフラや食料安全検査まであらゆるところで使用されているが、その技術が高コストであるために、その利用は工業目的か商業目的に限られている。ワシントン大学とマイクロソフトリサーチの研究チームは、コンシューマが利用できるように比較的簡素で手頃な価格のハイパースペクトラルカメラを実現できるかどうかを検討した。
「既存のシステムは高価であり、使いにくい。したがってわれわれは安価なハイパースペクトラルカメラを作り、われわれ自身で利用法を開発することを決定した。そのようなカメラを作製した後、それをあらゆる日常的な対象物、文字通り家庭やオフィスにある何にでも向けた。すると、それがあらゆる隠された情報を明らかにすることに驚いた」とこのプロジェクトに取り組んだマイクロソフトの研究者、Neel Joshiは話している。
一般的なカメラは光を3つの帯域に分ける、赤、緑それに青。これらの色の多様な組合せを用いて画像を生成する。しかし、電磁スペクトラルの他のスペクトラルを利用するカメラは、見えない違いを明らかにすることができる。
例えば、近赤外カメラは作物が健全であるかどうか、あるいは芸術作品が本物であるかどうかを明らかにすることができる。熱赤外カメラは、熱が窓から漏れてくるのか、あるいは過負荷の電気回路からのものであるかを可視化することができる。
「肉眼あるいは通常のカメラで世界を見るときには大抵は色を見ている。ハイパースペクトラルカメラでは、あるものが構成されている実際の物質を見ている。青いデニムと青いコットンの区別が付けられる」。
電磁スペクトラルの可視光と近赤外部分を利用するHyperCamは、17の異なる波長で世界を照射し、その各々の画像を生成する。
ハイパースペクトラルイメージングの課題は、生成した膨大な量のフレームをより分けることである。ワシントン大学のソフトウエアは画像を解析し、肉眼で見えるものと最も異なるものを見つけ出し、基本的にユーザが最も明らかにしたいものに照準を合わせる。
「それは可能な限りで全ての異なる画像を撮り、それを通常のカメラや人の眼に見えるものと比較し、どんな世界が最も違って見えるかを見つけ出そうとする」と論文の筆頭著者、ワシントン大学のコンピュータサイエンス&工学・電気工学、博士課程学生で、マイクロソフトリサーチの院生フェロー、Mayank Goelは説明している。
1つ残っている課題は、Goelによると、その技術が特に明るい光の中でうまく機能しないことだ。次の研究は、その問題に対処し、カメラをモバイルフォーンや他の機器に組み込めるほどに小型化することだ。