June, 24, 2015, Freiburg--薬やカプセルなど、材料組成の開発では、化学反応が思い通りに進んだかどうかを確認するために、反応槽からサンプルを取りだして実験室で検査する。その際、クロマトグラフィ、分光計を用いるが、これは費用も時間もかかる作業になる。
このプロセスは、フラウンホッファ応用固体物理学研究所(Fraunhofer Institutes for Applied Solid State Physics)IAFとフォトニックマイクロシステムズ(Photonic Microsystems)IPMSの研究グループが開発した新しい赤外レーザを使うことで簡素化される。
IAFのDr. Ralf Ostendorfによると、量子カスケードレーザ(QCL)を使うことで、例えば新薬開発で、化学反応プロセスをリアルタイムで連続的にモニタすることができる、現在のモニタリングプロセスで行われているようなランダムサンプルで分析する必要はない。
レーザが赤外光を反応槽に送る。物質が光の一部を吸収し、残りが散乱されて戻ってくるので、ディテクタで解析する。個々の物質が異なる特定の波長で光を吸収する。結果は、吸収スペクトルから正確に個々の物質が特定されることになる。この種の分光計により、反応槽の反応材料の濃度を、またすでに最終生成物に移転した量を反応過程のどの時点でも正確に判定することができるようになる。
このためのレーザにはいくつかの要件がある。発振されるレーザ光は1つの特定の波長だけで構成されていなければならない、さらに幅広いスペクトル域にわたり絶えず調整(チューニング)されなければならない。したがってレーザ光は、最初は短波長であるが、指定値に至るまで徐々に増えていく。さらに、その手順が最初から再スタートする。次にディテクタが各波長を測定し、個別サンプルからの散乱戻り光がどの程度であるかを判定する。さらに難しいことは、レーザの発振波長のスイッチングプロセスが可能な限り高速でなければならないことだ。現在までの所、レーザが全波長でチューニングし、化学反応が分析される実際の状態を確定するのに数秒必要だった。フラウンホッファIPMSの研究チームは、マイクロメカニカルスキャニングミラーを適用することによってこのスピードを1000倍速くできるようになった。1秒に1スペクトルではなく、今では1秒に1000スペクトルを記録することに成功している。
レーザはマッチ箱程度。したがって、製薬産業や化学産業で使用されている反応槽に適しているだけでなく、他のアプリケーションでも使いやすい。例えば、将来的には、警官や税関職員が疑わしい物質を迅速かつ簡単に検査できるようなハンドヘルド機器が実現可能になる。
フラウンホッファ研究所は、2015年末までにはこのレーザのプロトタイプの開発完了を目標にしている。