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超高速レーザでガラスに3D結晶導波路を作製

June, 19, 2015, Bethlehem--リーハイ大学(Lehigh University)、日本およびカナダの研究チームが、「世界初のフル機能単結晶ガラス導波路」を作製し実証することで、オールオプティカルデータ転送という夢に向けて一歩前進した。
 研究グループが発表した論文によると、超高速フェムト秒レーザを用いてほとんど損失なく光を導波できる3D単結晶を作製した。論文は、「3D集積オプティクス向けに強誘電体単結晶導波路アーキテクチャをレーザで直描」(Direct laser-writing of ferroelectric single-crystal waveguide architectures in glass for 3D integrated optics)。
 研究グループによると、この研究成果によって、光信号伝送に個別のオプトエレクトロニクスコンポーネント(導波路、スプリッタ、変調器、フィルタ、アンプ)を用いる現在のネットワークと比べて、小型、安価、高いエネルギー効率、高信頼のPICs開発が促進されることになる。
 「PICs製造に現在用いられている方法はフォトリソグラフィや他のプロセスで、これは平面形状に適したものである。3D PIC製造技術により、はるかに高密度なコンポーネント、一段とコンパクトなデバイスが可能になる。同時に、高密度3D光メモリのような新技術の機会も生まれる」と研究グループは主張している。
 3D PICs製造には先ず、伝達される光の散乱を阻止しなければならない。次に、ますます大量のデータを扱うことができるように光信号の高速伝送と操作が必要になる。
 ガラスは、本質的に不規則な原子構造のアモルファス材料であるので、このような課題には適さない。一方、高秩序の特殊格子構造の結晶は必要な光学品質を備えている。
 「アモルファス導波路は、等方的不規則原子構造のために根本的に二次光学非線形が欠如している。したがって、光信号を伝送するだけでなく、操作するようなフォトニックアプリケーションは、二次非線形光学応答をもつ結晶基板が必要になる」と論文は説明している。
 可能性の全てを実現するPICsの3Dレーザ製造には、ガラスに非線形光学結晶パタンを形成する能力が不可欠になる。
 ガラスに結晶パタンを形成するためにLehigh主導グループはフェムト秒レーザを用いた。
 材料科学・光学Himanshu Jain教授によると、光信号が伝えられるにともない光が散乱することを阻止するために研究チームは数年来ガラスに結晶を作製しようとしてきた。この作業は、結晶とガラスの特性が「相互排他的」であることから複雑になっている。
 ガラスは熱せられると結晶化するが、その転移を制御することが極めて重要。
 「問題は、このプロセスにどの程度の時間がかかり、得られる結晶が1つあるいはマルチであるかだ。欲しいのは単結晶。光は多結晶を透過することはできない。また、結晶は適切な形状でなければならない」。
 Lehighと京都大学およびモントリオールポリテクニークでの実験の結果、研究グループはガラスに単結晶を作製し、その導波機能を実証し、伝達効率を定量化した。ガラスと結晶の両方ともランタン・ボロンゲルマニウム(LaBGeO5)、強誘電体材料でできている。
 「強誘電体結晶は電気光学効果を示した。これは、光のスイッチング、スーパーマーケットのスキャナのように光をある場所から別の場所に進めるために利用できる。強誘電体結晶は、光の周波数を変換するためにも使える。これによって光を異なるチャネルで送ることが可能になる」。
 フェムト秒レーザ固有の焦点により、結晶をガラス表面ではなく内部に描くことができる。「レーザの焦点のみが、所望の変化を起こすだけの強度を持つからだ」とJain氏は説明している。
 光の非線形吸収は、選択したエリアでの光強度に依存する。
 「レーザ強度を2倍にすれば、20~100倍強い光吸収が得られる。これはフェムト秒レーザによって可能になる。京都には、このための特殊Labが存在する」と物理学教授、Volkmar Dierolf氏はコメントしている。