Science/Research 詳細

イオンゲルとグラフェンで、機械学習の計算を劇的に省力化できるAIデバイスを実現

November, 7, 2025, つくば/神戸--NIMS、東京理科大学、神戸大学による共同研究により、イオンの振る舞いを利用して情報処理を行う新しいAI(人工知能)デバイスを開発した。従来の深層学習(DL)に比べ、計算負荷を約100分の1に減らすことに成功している。端末機器(エッジデバイス)に直接搭載した「エッジAI」の情報処理性能への貢献が期待される。
この研究成果は、10月14日にACS Nano誌に掲載された。

研究成果の概要
従来の課題
近年、深層学習や生成AIに代表される機械学習の消費電力が指数関数的に増大しており、深刻な社会問題となっている。この解決に向けて低消費電力かつ高い計算性能を備えた人工知能(AI)デバイスの需要が高まっている。高効率な脳型情報処理であるリザバーコンピューティングを行うAIデバイス「物理リザバー」は、計算負荷(必要な積和演算の数)が小さく省電力であるため注目されているが、ソフトウェア処理に比べて低い計算性能が課題だった。

成果のポイント
今回、NIMS、東京理科大学、神戸大学からなる研究チームは、イオンを利用する物理リザバー素子を開発し、深層学習並みの高い計算性能と桁違いに低い計算負荷を実現した。高い電子移動度や両極性をもつグラフェンと、イオンゲルを組み合わせることで、速度が異なる様々な反応(イオンと電子が様々な形で動く)が複雑に関係しながら進むため、非常に広い範囲で時定数が異なる(変化速度が異なる)入力信号に対応が可能となる。その計算性能は、従来型物理リザバーの中でも最も高い計算性能を示し、ソフトウェアで実行した深層学習と同等の計算性能でありながら、計算負荷を約100分の1まで低減することに成功した。

今後は、この研究で得られた素子を搭載して、高性能・高効率に情報処理する超低消費電力エッジAIデバイスの実現を目指していく。

(詳細は、https://www.kobe-u.ac.jp)