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光ファイバ内の単一原子を選択的に励起し、単一光子生成

October, 29, 2025, 東京--東京理科大学大学院 理学研究科 物理学専攻の清水魁人(2025年度 博士課程3年)、同大学 理学部第一部 物理学科の長田朋助教、佐中薫准教授らの研究グループは、光ファイバに添加されている希土類原子集団のうち、単一の希土類原子だけを狙い撃ちして励起することで、光ファイバ内に直接単一光子を生成し、効率的に導波させることに成功した。

情報の強固な安全性を保持するために、量子力学の原理を利用した量子通信技術)の重要性は近年ますます高まってきている。光を用いた量子通信技術の実現へのキーデバイスとなるのが、光子1つ1つを制御することができる単一光子光源である。光量子通信では、この単一光子光源から生成した単一光子を、光ファイバにより少ない損失で遠隔地へ伝送させることが重要となる。

従来の手法では、量子ドットなどの単一光子を放出する光源を光ファイバの近傍に設置することで、単一光子を外部から光ファイバに接続し導波させる方法が用いられていた。これに対し、この研究では光ファイバの内部に添加された希土類原子を利用し、集光したレーザ光を光ファイバの側面から照射することで、特定の単一希土類原子を選択的に励起する手法を提案した。この手法では、光源となる希土類原子が光ファイバの内部に存在するため、光ファイバの内部に直接単一光子を生成することが可能となり、生成した単一光子を光ファイバ内に効率よく導波できることを実験的に示した。
研究成果は、単一光子光源から伝送まで光ファイバで統合された次世代の光量子通信ネットワークの実現につながることが期待される。