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ミクロンサイズの単一粒子を光で制御

March, 23, 2015, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、ミクロンサイズの単一粒子を光で制御するためのより強力な方法を実証した。
 粒子を操作する光マイクロファイバやナノファイバの分野はこの10年間で拡大していき、物理学や生物学の世界で有望な用途がたくさんある。ほとんどの研究は、「基本モード」として知られる光の基本プロファイルを用いたこの技術の利用に重点を置いている。OISTの光・物質相互作用ユニットの研究者たちは、光のプロファイルを「高次モード」に変えたことで、光の力が基本モードのときよりも強力になることを実証した。この 力を利用すると、基本モードのときよりも格段に速く小さなポリスチレンビーズを捕え、マイクロファイバに沿って動かすことができる。研究結果は、Scientific Reports 誌に掲載された。
OISTの研究者たちは、基本モードと高次モードのそれぞれの光に対して粒子がどのように反応し、どちらのモードがより大きなエバネッセント場をつくりだすかを比較し、高次モードを用いると、粒子が最大8倍の速度でマイクロファイバに沿って移動することを確認した。
「想定していたように速度増加を確認することができた。増加要因の一つはマイクロ流体力と考えられる」と、論文筆頭著者、シーレ・ニコーマック准教授の指導の下、OISTで博士課程の研究を行っているアイルランドのコーク・カレッジ大学博士課程の学生アイリ・マイマイティ氏は説明している。粒子は速度を得るにつれ、ファイバからわずかに離れる。これによって抵抗が減り、ますますその速度を増す。
実験成功の鍵の一つは、マイクロファイバの形状を変更して、実験で用いるウエスト領域に達するまで光が漏れないようにしたこと。マイクロファイバ直径は80µmから始まり、次第に細くなってウエスト部で2µmになる。研究者たちは、炎の上にファイバをかざし十分に熱せられた後、徐々にファイバを伸ばして中央部を所定の薄さにすることでテーパ部を作製する。
マイマイティ氏は、ファイバの全長にわたって光の損失が確実にごくわずかとなるようテーパ部の形状を制御した。これにより、ウエスト部で粒子を制御するために用いられる光量エネルギーが最適化される。
光マイクロやナノファイバを用いた粒子の光トラッピングと操作は、例えば、標的細胞内のような特定の場所への薬物の送達、細胞成分間の相互作用力の測定を容易にするとともに、冷却原子を用いた量子物理学の研究に役立つ可能性がある。研究者たちはまた、DNAとRNAの転写および翻訳過程に関与するタンパク質を研究するためにこのツールを利用することにも関心を抱いている。
 研究者たちはマイクロファイバの使用に際して、個別粒子を捕らえて移動させるために研究で広く使用されている手法である光ピンセットも同時に使用した。マイクロファイバにおける高次モードは粒子操作が可能な方法を増やすため、光ピンセットの改良を促す。今後、研究者たちは、マイクロファイバが捕捉粒子に関するより正確な情報を伝える機能を取り込むことによっても光ピンセットの感度を向上させるだろうと予想している。
「極薄のファイバの良さは、このファイバが、我々が選択した特定のパラメータだけに影響を及ぼしながら様々な多くの物理システムの探査を可能にする非常に非侵襲的なツールであるということだ」と、OIST光・物質相互作用ユニットを率いるシーレ・ニコーマック准教授は語り、「この研究では、光マイクロファイバに高次光モードを使用してミクロンサイズの粒子を捕捉することに焦点を当てているが、同様の技術を原子レベルで使用することにより量子ネットワーク内にいくつかのビルディングブロックをつくることができる」と、コメントしている。
(詳細は、www.oist.jp)