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テラヘルツ通信デバイスの機械的チューニング手法を開発

September, 3, 2025, 東京--東京科学大学(Science Tokyo総合研究院 未来産業技術研究所 李尚曄助教、進士忠彦教授らの共同研究チームは、マイクロアクチュエータを用いた機械チューニング技術によりテラヘルツ帯通信デバイスの性能改善に成功した。

電磁波のうち周波数100GHzを超えるテラヘルツ帯は、極めて広い周波数帯域を通信に活用できる可能性があり、その応用について、近年世界的に研究開発が進められている。日本国内でも、これまでの300GHz帯に加え、近年では150GHz帯に関する研究が活発に展開されている。
一方で、周波数が高くなるほど波長が短くなるため、通信モジュール製造時に生じる構造の機械的誤差が通信精度に相対的に大きな影響を及ぼし、モジュールの性能を大きく左右してしまうという課題があった。

この課題を克服するために、この研究では、1µmの精度で位置調整が可能なマイクロアクチュエータを、テラヘルツ帯デバイスのアンテナとチップ間を接続する導波管変換器に導入し、機械的に性能劣化を補償する手法の可能性を検討した。導波管変換器内部の反射鏡には、導電性を有するフレキシブルメンブレンを用い、マイクロアクチュエータによりその位置を制御する構造を構築した。その結果、250GHz帯において、導波管変換器における反射および透過特性を高精度に制御できることを実証した。

要点
・1µmの精度を持つマイクロアクチュエータを用いた導波管変換器のチューニング機構を開発
・波長の数%に相当する機械的誤差による、通信モジュールの性能劣化に対応可能
・テラヘルツ帯を活用したBeyond 5G/6G無線通信やセンシングにおける、性能補償および歩留まり改善に寄与

研究成果は、2025年6月26日付の国際ジャーナルIEEE Accessにて掲載された。
(詳細は、https://www.isct.ac.jp)