NMR分光法でクオンタムリープ

August, 29, 2025, Freiburg--Horizon Europe Research and Innovation Action (RIA) プロジェクトである QUENCH は、核磁気共鳴 (NMR) 分光法の状況を変革することを目指している。QUENCHコンソーシアムが達成した最近のマイルストーンは、量子センサの検出可能な周波数がわずか数メガヘルツから85MHzまで10倍に増加したことを示している。

2024年1月に開始されたこのイニシアチブには、量子センシング技術、特にダイヤモンドの窒素空孔(NV)センターを使用してベンチトップNMR分光計を再定義するという共通のビジョンを持って、4か国の7つの主要パートナーが集まる。卓上型NMR装置は、そのコンパクトな設計とアクセスしやすさで高く評価されているが、感度の制限に直面することがよくある。QUENCHは、高度な量子技術を統合することでこの障壁を打ち破り、超高感度分子分析の新時代の到来を告げることを目指している。
この技術は、分析化学や品質管理から医療診断や材料科学に至るまで、幅広い応用が期待されている。

「われわれの目標は、堅牢で量子強化コンポーネントをコンパクトで商業的に実行可能な機器に直接埋め込むことで、卓上NMR分光法の可能性を最大限に引き出すことだ」と、ミュンヘン工科大学(TUM)の量子センサ開発の科学リーダー、QUENCHプロジェクトのコーディネーターDominik Bucher教授は話している。

QUENCHコンソーシアムが達成した最近のマイルストーンでは、量子センサの検出可能な周波数がわずか数メガヘルツから85MHzまで10倍に増加したことが実証されている。Dominik Bucher、Aharon Blank、およびその共同研究者が率いるチームは、従来のパルスプロトコルを大幅に上回る新しい連続動的デカップリング(CDD)技術を導入した。この方法は、より高いスペクトル分解能を実現し、高度なNMRアプリケーションに不可欠な高周波信号の検出を可能にする。その結果、この画期的な進歩は、高分解能化学分析、高磁場での磁気共鳴、通信およびセンシング技術における高周波場検出に新たな可能性をもたらす。

主な技術柱は次のとおり。
・FraunhoferIAFが開発した高品質の合成ダイヤモンドで、NVセンター性能に最適化されている。
・ミュンヘン工科大学(TUM)が主導する量子論理強化読み出し手法により、量子センサからの超高感度データ抽出が可能になる。
・量子スピンのコヒーレント操作に重要なUNIVERSIDAD DEL PAIS VASCO/EUSKAL HERRIKO UNIBERTSITATEA(UPV/EHU)の高度なパルス系列。
・Magritekが提供する、コンパクトなNMRシステム向けに調整された高均質性磁石。
・TECHNION-ISRAEL INSTITUTE OF TECHNOLOGY(TECHNION)が主導するマイクロ波共振器の開発により、NVセンターの運用に不可欠な精密なマイクロ波制御を実現。
・チェコを拠点とするコンサルティング会社であるAMIRESは、プロジェクトのライフサイクルの調整と成果の普及をサポートしている。

QUENCHプロジェクトの成功は、大陸全体に広範囲にわたる利益をもたらすことが期待されている。これにより、ヨーロッパ全土で量子技術の開発が加速し、センサおよび計測業界における新たな商業機会が促進され、応用量子センシングのリーダーとしてのヨーロッパの地位が強化される。