August, 19, 2025, Lausanne--EPFLとハーバード大学の研究者らは、同じデバイス上でテラヘルツ範囲の電磁パルスと光学パルスを変換できるチップを設計した。それらの統合設計により、超高速テレコム、測距、分光法、およびコンピューティング用のデバイスの開発を可能にすると考えられている。
THz放射は、マイクロ波(Wi-Fiなどのテレコム技術で使用される)よりも高いが、赤外線(レーザや光ファイバで使用される)よりも低い周波数を持つ電磁スペクトル上の波長帯を表す。テラヘルツ(THz)信号は波長が短いため、大量のデータを非常に高速に送信できるが、THz放射を既存の光学およびマイクロ波技術に接続することは極めて難しかった。
2023年、ハイブリッドフォトニクス研究所(Laboratory of Hybrid Photonics)の研究チームは、ニオブ酸リチウム(LN)製の極薄なフォトニックチップを作成し、レーザビームに接続すると細かく調整可能なTHz波を生成することで、このギャップを埋めることに一歩近づいた。今回、チームは、THz波を生成するだけでなく、入ってくるTHz波を光信号に変換することで検出する新しい設計を報告した。
単一の小型化されたプラットフォームでのこの双方向変換は、THzと光ドメインを橋渡しするための重要なステップであり、通信、センシング、分光法、およびコンピューティング用のコンパクトで電力効率の高いデバイスの開発を可能にする見られている。この研究は、Nature Communications に掲載された。
「ニオブ酸リチウム(LN)フォトニック回路チップでTHzパルスを初めて検出したことに加えて、100倍以上のTHz電界を生成し、帯域幅を5倍に増加させた(680GHzから3.5THzへ)」と、ハイブリッドフォトニクス研究所の所長Cristina Benea-Chelmusはコメントしている。
THzレーダから6G通信へ
Ph.D学生で筆頭著者、Yazan Lampertの説明によると、チームの革新的な設計は、伝送ラインと言うミクロンサイズの構造をLNフォトニックチップに埋め込むことに集中している。これらのラインは、チップスケールの無線ケーブルのように機能し、チップに沿ってTHz波を導く。科学者たちは、光(光)波を導くために2番目の構造を近くに配置することで、エネルギー損失を最小限に抑えながら2つの間の相互作用と変換を強化した。
「小型化された回路設計により、同じプラットフォーム上で光パルスとTHzパルスの両方を制御できる。われわれのアプローチは、フォトニック回路とTHz回路を単一のデバイスに組み合わせ、前例のない帯域幅を備えている」(Lampert)。
ハイブリッドデバイスによって生成された広帯域テラヘルツ信号は、たとえばテラヘルツベースのレーダーの開発に使用でき、非常に短いTHzパルスを使用して1mm以内の物体の距離(測距)を推定できる。コンパクトでエネルギー効率の高い設計のおかげで、このチップはレーザ、光変調器、検出器などの既存のフォトニック技術とも互換性がある。チームはすでに、自動運転車で使用されるような次世代の通信および測距システムへのシームレスな統合を可能にするために、チップ設計の完全小型化に取り組んでいる。
この研究の共同筆頭著者であり、現在DRS Daylight Solutionsのプリンシパルレーザエンジニア(元ハーバード大学のポスドク研究員)であるAmirhassan Shams-Ansariは、「薄膜ニオブ酸リチウムは、統合フォトニクスのための強力なプラットフォームであることが証明されており、これにより新世代のアプリケーションとデバイスが可能になる。この技術が極めて有望でありながら十分に未開拓の THz 領域に進むのを見るのは実にエキサイティングだ。」
「われわれが提案する設計ガイドラインは、センシングと測距が通信ネットワークの重要なコンポーネントとなる高速6G通信などの将来のTHzアプリケーションで重要になると予想している」とBenea-Chelmus氏は話している。