March, 10, 2015, Sydney--シドニー大学CUDOSの研究チームは、チップスケールのデバイスで光非線形性を選択的に強めたり、抑制したりする方法を開発した。
「このブレイクスルーは、フォトニックチップや光通信における研究で基本的な進歩だ。光通信システムでは、情報の流れを劣化させるので、光の非線形性は厄介者扱いされることが多い。しかし同時に、この非線形効果を利用する多くの有用なアプリケーションがある。非線形性が一層役に立つように、それを飛躍的に強化できることを示した。逆に、同じ方法を使って同じ非線形性を完全に抑制できることも示した。重要なことは、フォトニックチップでその実験を行ったことだ」と論文の筆頭著者、Moritz Merklein氏は説明している。
その成果を達成するために、研究チームは、チップスケールデバイスで光と音の相互作用を扱う特殊光非線形性を研究した。
「われわれが注目した誘導ブリルアン散乱(SBS)は、2つの光波と1つの音響波が相互作用する時に起こる。ファイバを伝搬する光波が音響波によって中断、つまり散乱させられると、ストークス波、後進波が生ずる。この非線形散乱過程は、ファイバ通信や信号処理アプリケーションで信号歪を起こし、光ファイバ通信ネットワークの容量制限となることはよく知られている」。
「われわれはこの中断を回避したいが、同時にこの効果には他にない特性があり、それを利用してマイクロ波信号を操作したり、ある種のレーザを開発したりするために利用できる重要な用途がある。したがって、われわれは都合によって、あるいはアプリケーションによって選択的にこの相互作用を強めたり抑制したりできることを示した。このアプローチは、多くの他の光学的非線形性に一般化できると考えている」。
研究チームは、チップにグレーティング構造を導入することで対処した。グレーティングは光に対してバンドギャップを形成する。これが光の伝搬に強く影響を与える。これは半導体が電子の流れを制御するのと同じ方法である。これが光の非線形性を著しく強化する。わずかに異なる周波数で、バンドギャップは光の非線形性を完全に抑制する。必要に応じて光の非線形性がオン、オフできるように、グレーティングはチューニングできる。
(詳細は、www.nature.com)