March, 4, 2015, Salt Lake City--ユタ大学(University of Utah)の研究チームは、テラヘルツ(THz)スペクトルの多様な周波数を分離できるフィルタの設計で新たなアプローチを開発した。
THzスペクトルは次世代通信帯域であり、これにより携帯電話ユーザやインターネットサーファは、現在よりも1000倍高速にデータのダウンロードができる。フィルタが設計されると、市販のインクジェットプリンタを用いて製造できる。
THzスペクトル通信の開発では、異なる周波数の除去が重要になる。不要な周波数を除去することでユーザは、ノイズや干渉信号を減らし、インターネットから情報をダウンロードし、携帯電話で話すことができるようになる。
テラヘルツ帯域は、赤外光と電波との間の周波数帯域。この帯域は、データ伝送レート拡大の可能性が大きいことから、技術者は通信の次の未開拓領域と見なしている。この技術は、次世代の医療イメージングや空港スキャナ向けにも研究されている。THz波は、イオン化放射を用いることなく、多くの物質を透過できる。そのため、医療イメージングやセキュリティスクリーニング機器での利用で関心を集めている。
携帯電話は、周波数2.4GHzで動作するが、テラヘルツは、1000GHzになる。ユタ大学院生、Andrew Paulsen氏によると、THzスペクトルを通信に効果的に利用すると、現状の1000倍の帯域が得られる。
研究グループは、MATLABを利用したコンピュータ設計、通常のインクジェットプリンタでプラスチックシートにそれを印刷することで、あるTHz周波数を通して他の周波数を遮断するフィルタが造れることを発見した。プリンタは、回路基板や微小アンテナの製造に用いるものと同じ銀-メタルインクを利用する。
不可視の光ビームを放出するTHzジェネレータを用いることで研究グループは、ビームがそのフィルタを透過する際の周波数を計測できる。波状の標的のように見える印刷されたデザインのサイズと形状が、どの周波数がどの程度透過するかを決める。
この方法は、THzスペクトルを商用利用するための重要な一歩であり、次の5G携帯電話ネットワークのベースとしても可能性がある。現在の4Gネットワークの携帯電話が10~15Mbpsでダウンロードできるが、THz技術はテラビット(Tbps)で送受信できる。そのようなネットワークで使うフィルタは、極めて重要なコンポーネントになる。多数の通信チャネルを設定するために周波数の分離が必要となるからである。多くのワイヤレス機器はフィルタを使って周波数を選び出す、Wi-Fiルータ、テレビ、携帯電話もこれに含まれる。
THz技術のWi-Fiルータや携帯電話をコンシューマが利用するのはさらに10年先になるだろうが、通信会社はもっと早期にその技術をネットワークバックボーンに利用することができる。THz周波数の現在の制限要因は、見通し線が必要なこと、また非常に短い距離しか伝送できないこと。とは言え、研究者の中にはすでに、ワイヤレスTHzチップで劇的なダウンロード速度を達成した者がおり、別の研究者はTHzスペクトルを使うカメラで4Kテレビ信号を放送することに関心を抱いている。