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NTT、世界初、写真や絵に動きを与える不思議な照明『変幻灯』を開発

February, 25, 2015, 東京--日本電信電話(NTT)は、光のパタンを投影することで、止まった画像にリアルな動きの印象を与えることのできるまったく新しい発想に基づく光投影技術「変幻灯」を開発した。
 人間の錯覚を巧みに利用した「変幻灯」は、止まっているはずのものが動いて見えるという、かつてなかった視覚体験を生み出す。印刷物、写真、絵画などの伝統的な映像表現に多様かつ斬新な表情を加えることのできる「変幻灯」は、今後、サイネージ、インテリア、エンターテインメントなど幅広い分野での応用が期待される。
 身近な事物に新しい印象を与える手法としては、プロジェクタを使って対象に映像を投影する、いわゆる「プロジェクションマッピング」が有効。プロジェクションマッピングでは、対象の表面をキャンバスとして美しい映像を映し出すことでさまざまな視覚効果を生み出すことができるが、従来技術では止まった対象自体が動いているという印象を与えることはできない。これは、対象が本来持っている風合いや色合いを打ち消してその上に動画を表示する技術だからだ。また、従来法は物理的に正しい映像を表示することをめざしたものであり、止まった対象に動きだけを与えることは理論的に困難。
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所では、長年取り組んできた人間の感覚情報処理の研究にもとづき、人間が自然な動きを知覚する際に働く視覚メカニズムの科学的知見を応用して、印刷物などの止まった対象に様々な動きの印象を与えることのできる技術「変幻灯」を開発した。
 「変幻灯」では、人間の錯覚を利用して、静止画に動画のような動き印象を与えることができる。炎のゆらめきや、風の印象、人物が生きているような動きなどを絵画や写真に加えることができる。また、視点の制限はあるものの、3次元物体に対して動き印象を与えることにも成功した。
 このように変幻灯は新しい情報表現のかたちを提供し、多くの分野で活用できると考えている。
(1)広告への応用
 光投影によって紙媒体に動き印象を加えることで、広告が伝えたいメッセージを強調することができる。
(2)インテリアへの応用
 床、壁などのインテリアの模様を変幻灯で錯覚的に変形させることによって、そこに液体が流れているように見せたり、熱気を演出したりすることができる。
(3)芸術・エンターテインメント分野への応用
 例えば、キャラクタのイラストに変幻灯を適用することで、キャラクタに動きを与え、愛らしさや驚きを付け加えることができる。さらには、止まった対象に動きを与えることには長けている変幻灯と、対象の色や肌理の見え方を変えることを得意とする従来のプロジェクションマッピング技術との融合を融合させることで、より豊かな映像表現が可能になる。

技術のポイント
 変幻灯は、投影によってモノクロの動きのパタンだけを静止画に加える。静止画に含まれている色や形はそのまま見えている。画像としては正しく動画になっていないが、それを見た人間の脳は、まるで正しい動画であるように知覚する。
 普通の映像を見るとき、脳は映像中の色、形、動きを個別に処理し、後でそれらを巧く統合して一つの世界を見ている。変幻灯を体験するとき、ユーザは色や形は止まった対象から取得し、動きは投影されたモノクロの映像から取得する。色や形は止まっているので、動きと空間的に「ずれ」が生じるが、辻褄の合ったようにものを見ようとする脳は動き、色、形を統合する際に、その「ずれ」を補正する。そのため、変幻灯を体験する際には、ユーザは動き、形、色のずれに気づかずに、あたかも止まった対象の色や形が動いているように感じる。これらは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所が長年研究を進めてきた人間の動きや質感の知覚特性を踏まえた成果。
 従来の代表的なプロジェクションマッピング技術(シェーダーランプ)では、対象面に新たな映像を映し出すので、多くの場合対象面の模様は見えなくなるが、変幻灯では、対象の模様を活かし、その模様を動かす工夫をしている。また、一般的にプロジェクションマッピングは暗い場所で行うことが多いが、変幻灯はむしろ明るい場所で、投影対象が自然に見える状況で実行することを想定した技術。また、投影される映像に関しても、3次元対象にうまく投影することを目的にしたプロジェクションマッピングにおいてはCGを駆使して入念に製作する必要があるが、脳の特性をうまく利用して二次元対象で大きな効果を持つ変幻灯においては、簡単な画像処理で投影映像を製作することができる。このように、変幻灯は従来のプロジェクションマッピングとは異なる新たな視覚体験を、簡便な方法で生み出すことができる技術。