March, 17, 2025, 京都--島津製作所は、3月5日に18桁精度に相当するストロンチウム光格子時計「Aether clock OC 020」(イーサクロック)の受注を開始した。
光格子時計は原子時計の一種で、現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計に対して100倍以上の精度を実現している。18桁精度は100億年に1秒の誤差に相当し、光格子時計は次世代の「秒」の定義の有力な候補として注目されている。この製品は2024年11月に、装置体積250ℓの小型化に成功した装置で、光格子時計としては世界初の商用機となる。各国の標準機関や大学・研究所などに設置することで、時間基準としてだけではなく様々なフィールド・目的で使用できる。
島津製作所は2017年から東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の香取秀俊教授らのグループと共同研究を開始し、翌年実施した東京スカイツリーでの一般相対性理論の検証実験では、光格子時計の制御システムを開発した。その後、搭載レーザおよびこの製品の開発も手掛け、小型化に加えてレーザの堅牢性の向上、レーザ周波数の自動調整・制御技術の開発を実現した結果、世界初の製品化への道筋を付けられた。従来の光格子時計では、煩雑な調整業務が頻繁に必要だったが、この製品では作業者の負荷を大幅に低減できる。
小型化で移設が容易になったことにより、様々なフィールドで一般相対性理論を利用した重力ポテンシャル測定に応用できる。例えば、数cm精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視、数時間から数年かけて起こる地殻変動(標高変化)の精密な観測、超高精度な標高差計測・測位システムの確立など、光格子時計は将来の社会基盤となる可能性を秘めている。
研究は2018年から、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」(JPMJMI18A1)の支援を受けて行われている。
(詳細は、https://www.shimadzu.co.jp)