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超小型波長変換デバイスによる真空紫外光発生に成功

December, 24, 2024, 大阪--大阪大学レーザー科学研究所の南部誠明助教、吉村政志教授、大阪大学大学院工学研究科の上向井正裕助教、谷川智之准教授、森勇介教授、片山竜二教授、立命館大学総合科学技術研究機構の藤原康文教授、京都大学大学院工学研究科の石井良太助教、川上養一教授らの研究グループは、従来型の波長変換デバイスとは全く異なる超小型な微小共振器デバイスを作製し、波長変換により波長199 nmの真空深紫外(VUV)光を発生することに成功した。

IoT(Internet of Things)や 5G(第 5 世代移動通信システム)技術の急速な発展に伴い、電子部品やプリント回路基板の小型化、高密度化が進み、極めて小さなスポットに集光可能な波長200 nm以下のVUVレーザ光を用いた微細加工、フォトリソグラフィ、ウェハやフォトマスクの検査などの需要が急速に拡大している。しかしながら、従来のVUVレーザ光源は大型で、ランニングコストも高いガスレーザであり、小型で高効率、さらにメンテナンスフリーな次世代の全固体光源が求められている。波長変換技術は全固体VUVレーザ光源を実現する有力な候補だが、従来型のデバイス構造と波長変換結晶の組み合わせでは、上述した次世代光源の要件を満たすことは困難。そのため新規構造・新規結晶による波長変換デバイスを新たに開発する必要があった。

研究グループは、これまでの研究で、新たに微小共振器型のデバイス構造を提案することで、波長変換結晶の選択肢を飛躍的に拡大可能であることを示してきた。このデバイスは、厚さがコヒーレンス長(分極反転なしに最大の変換光強度が得られる長さ)の波長変換結晶からなる共振器の内部にレーザ光を強く閉じ込め、そこから効率よく発生する変換光の反射位相を精密に制御することで高効率な波長変換を達成するというものである。
研究では、吸収端波長が130 nmと極めて短く、高い光学非線形性と光損傷耐性を有しながらも、従来の波長変換デバイスに必須であると考えられてきた強誘電性や複屈折性を持たないSrB4O7(SBO)結晶に注目し、微小共振器を用いた第二高調波発生(SHG)による波長199 nmのVUV光発生に成功した。これにより、小型・高効率・メンテナンスフリーといった特徴を有する次世代のVUVレーザ光源の実現が期待される。

研究成果は、国際科学誌「Applied Physics Express」に、8月20日に公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)