December, 23, 2024, 仙台--東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの阿部真樹博士研究員(日本学術振興会特別研究員)、石黒志准教授、高橋幸生教授らの研究グループは、コヒーレント回折イメージングにおいて一回の計測でも振幅像の取得が可能になる新たな解析手法を開発した。この手法は、従来手法においても一回の計測から得ることができた光波の進み(もしくは遅れ)具合の分布を表す像(位相像)が振幅像と類似した構造を示すことに着目し、その構造類似性を振幅像の取得に活用する。
これにより、約30 nm(ナノメートル、1 nmは10億分の1メートル)という高い分解能を達成しただけでなく、従来手法と同等の精度を持つ振幅像を60分の1以下の計測時間で取得することに成功した。
この手法は、電池や触媒の内部で生じる化学反応のリアルタイム観察を可能にし、材料の性能劣化メカニズムの解明や新材料開発の加速など、様々な分野で応用されると期待される。
コヒーレント回折イメージングは、レンズを使用せずに高分解能な観察が可能なレンズレスの顕微手法である。この特徴は特に、高性能レンズの作製が難しいX線領域において有用で、レンズ性能を超える分解能で材料内部の化学状態を観察できることから注目を集めている。しかし、化学状態を観察するために必要な試料による光の吸収分布を表す像(振幅像)を得るためには複数回の計測が必要であり、このことが動的な化学反応の観察への応用を妨げていた。
この成果は、2024年12月13日付で光学およびフォトニクス分野の専門誌Opticaにオンライン公開された。
(詳細は、https://www.tohoku.ac.jp)