December, 20, 2024, つくば--産業技術総合研究所(産総研)工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ 川嶋なつみ 研究員、平井亜紀子 研究グループ長、近藤余範 主任研究員、同研究部門 尾藤洋一 副研究部門長は不確かさ4.3 nmで基準球面レンズの球面度を高精度に校正可能な技術を開発した。
スマートフォンや内視鏡などに搭載されるカメラには、小型であっても高精細な画像を得ることができるレンズの存在が不可欠である。レンズや曲面鏡など球面形状をもつ光学素子の高精度化のためには、表面の凹凸をナノレベルに低減するだけでなく、絶対形状をナノレベルで設計形状と合致させることが求められる。そのため、加工された表面形状を精密かつ正確に測定して、設計された形状からのズレを評価する必要がある。それを実現する高精度な形状測定装置には、基準球面レンズと呼ばれる高い球面度をもつ面を参照する仕組みがあり、その球面度が測定の精度を左右している。
今回、レーザ干渉計による球面度校正装置において、ランダムボール法という実用的な手法により産業界の任意のFナンバーの基準球面レンズを簡便に校正するシステムを確立した。また、光学系調整時のエラー(ミスアライメント)による測定誤差を詳細に解析した不確かさの評価法を確立した。これらにより、不確かさ4.3 nmの測定精度でユーザの任意のFナンバーの基準球面レンズを校正できるようになった。今後、産業界で使用される基準球面レンズの校正体系を通じて、高精度な光学素子の開発、製品の品質管理の高度化に貢献する。
この研究成果の詳細は、2024年10月24日に「Optics and Lasers in Engineering」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)