September, 11, 2024, 京都--超高速演算が可能な光量子コンピュータや盗聴不可能な暗号通信である量子暗号通信などの実現には、光子をひとつひとつ発生させる単一光子源が大変重要である。
最近、単⾊性に優れた光⼦が室温で安定に発⽣する新たな光子源として、窒素とホウ素の層状物質である「六⽅晶窒化ホウ素(hBN)」中の色中心が注⽬されている。しかし、発光波長の異なる複数の色中心がほぼ同じ場所に存在する場合、発生する光子よりも大きなエネルギーで励起する従来の方法では、対象の色中心以外からの発光がノイズになることが重大な問題となっていた。
今回、京都大学電子工学専攻 岡城勇大 修士課程学生、嶋﨑幸之介 同博士課程学生、鈴木和樹 同修士課程学生(研究当時)、向井佑 同助教、竹内繁樹 同教授と公立千歳科学技術大学 髙島秀聡 准教授からなる研究グループは、シドニー工科大学の共同研究グループとともに、発生する光子よりも小さなエネルギーの励起光を用いることで、特定の色中心から選択的に単一光子を発生させることに成功した。また、この励起方法によりノイズとなる背景光子を低減できることも実証した。
今回得られた結果は、室温で動作する良質な単一光子源への道を拓くものであり、光量子コンピュータや量子暗号通信、量子センサの研究の飛躍的な発展に貢献すると期待される。
研究成果は、2024年9月5日正午(米国東部時間)に米国化学会が発行する国際学術誌「ACS Photonics」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)