July, 30, 2024, 福岡--九州大学の研究者は、高速光信号技術の鍵となる光変調器の超高速化を目指し、170Gbaud以上の信号生成能力を持つデバイスの開発に成功した。
2030年ごろに普及するBeyond 5Gは、フィジカル空間とサイバ空間との間で信号伝送と処理が相互に融合し、スマートシティ、遠隔医療、ロボティックスの普及などの通信技術を社会生活により一層身近なものにすると言われている。一方、これを支えるEthernetスピードは、格段の高速化が求められるため、6Gを実現する高性能なデバイスやシステムの開発は急務となっている。
光変調器は、上記の光通信トラフィックを牽引する光コンポーネンツとして最も重要なデバイスの一つであり、その動作性能の向上は光信号伝送の高速化の鍵となる。
研究では、既存の光通信速度を大幅に超えるような超高速光変調を実現するため、電気光学効果と速度応答性に優れた強誘電体薄膜を応用した光変調器の作製に取り組んだ。ペロブスカイト型金属酸化物として知られる強誘電体は、誘電性、焦電性、圧電性など様々な興味深い物理的性質を持つが、適切に元素組成と結晶配列を調整した結晶体は強い電気光学効果を持つことも知られている。しかし、その結晶成長は困難であり、光学デバイスの作製に有用なシリコン基板上で結晶膜を形成するには課題があった。
九州大学先導物質化学研究所の横山士吉教授らの研究グループは、強誘電体(PLZT)薄膜をシリコン基板上に結晶膜を形成させる方法を見出し、超高速光変調器を作製することに成功した。光変調器は、長さ2.5mmの小型化を可能にしたばかりでなく、既存デバイスの10倍以上の動作効率を示し、高速性では170ギガボーレート以上で変調動作することを明らかにした。このような超高速光変調は、6Gを支える様々な光ネットワーク伝送の最先端技術や光量子コンピュータを支える光集積技術への展開も期待できる。
研究成果は、2024年7月2日(火)に、英国科学誌(Nature Portfolio)の「Communications Materials」に掲載された。
(詳細は、https://www.kyushu-u.ac.jp)