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6Gに向けた高効率・低消費電力ミリ波帯 MIMOフェーズドアレイ受信機を開発

July, 18, 2024, 東京--東京工業大学 工学院 電気電子系の岡田健一教授らの研究チームは、次世代6Gに向け、高面積効率・低消費電力で高ビットレート動作が可能な新しいMIMO技術によるフェーズドアレイ受信機を開発した。

第5世代移動通信システム(5G)では、ミリ波帯の周波数を用いて通信速度の向上を図っているが、さらなる高速化のために、より高い周波数の活用や大規模MIMOの利用が期待されている。しかし従来のMIMO技術は空間分割により複数の無線経路を確立しているため、アンテナ数とMIMOストリーム数の積に比例して回路規模が肥大化し、大規模MIMOの集積化が困難になるという課題があった。

研究では高速同期ビーム切り替えをフェーズドアレイ部で実現、MIMOストリーム数に回路規模が依存しない時分割MIMO技術を新たに開発した。時分割による回路再利用により回路規模を大幅に削減し、MIMOによる高データレートを実現しつつも、低消費電力かつ省面積コストのフェーズドアレイが実現できた。

開発した時分割MIMOフェーズドアレイ受信機ICは、65 nm世代のシリコンCMOSプロセスで作製した。このICを、アンテナを有するプリント基板に実装し、OTA測定を行った結果、5G NR規格準拠の4ストリーム信号のMIMO通信に成功し、9.6 Gbpsの高ビットレート動作を実証した。これまで発表されている最新の5Gフェーズドアレイ受信機の中でも最高のビットレートを、最高の面積効率で実現した。

開発した受信機は5G及び6G向けのIoTやモバイル端末に搭載できるため、衛星通信への応用など、高ビットレートの特長を生かした新しい通信サービスの実用化・アプリケーション展開を大きく進展させる成果といえる。

研究成果は、6月16日~20日に米国ホノルルで開催された「2024 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits」で発表された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)