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金ナノ粒子がガン細胞を殺す仕組み

July, 9, 2024, Poland--ポーランドの研究者らは、ガン細胞を殺すには、金ナノ粒子のサイズではなく形状が最も重要であることを発見した(Small, doi: 10.1002/smll.202400778)。研究チームは、ホロトモグラフィー(サンプルの3D屈折率を測定するラベルフリーのリアルタイムレーザ技術)を用いてライブセルイメージングを行い、星型のナノ粒子が細胞膜に穴を開け、細胞死を引き起こすことを発見した。

今回の研究は、ガン細胞と金ナノ粒子の機械的相互作用の解明につながり、より効果的で標的を絞った治療法の開発への道を開く可能性がある。

ホロトモグラフィの利点
生細胞イメージングにより、科学者は細胞の自然な生理機能を妨げることなく、細胞の内部構造を観察することができる。ホロトモグラフィは比較的新しい生細胞イメージング技術であり、細胞内の3D屈折率分布を非侵襲的に、顕微鏡検査で視覚を向上させるために使用される蛍光化合物である蛍光色素を添加せずに測定する。

研究チームは、「小さいほど殺すのが速い」という一般的な仮定が、様々な形状の金ナノ粒子に当てはまるかどうかを検証したいと考えた。Nanolive 3D CX-Aホロトモグラフィ顕微鏡では、光毒性がほとんどまたはまったくない状態で、特定の細胞区画とナノ粒子の蓄積部位を視覚化することができた。

「他の高解像度顕微鏡技術とは異なり、ホロトモグラフィはサンプルの調製や細胞への異物の混入を必要としない」と、研究の著者、ポーランド科学アカデミー核物理学研究所のJoanna Depciuch-Czarnyは、研究に付随するプレスリリースで語っている。「したがって、金ナノ粒子とガン細胞との相互作用は、後者が培養されたインキュベータ内で、邪魔されない環境で、さらにナノメートルの分解能で、あらゆる側面から同時に、そして実際にリアルタイムで直接観察することができた。」

モデルの作成
Depciuch-Czarnyとチームは、平均サイズ10 nmの球状形状、平均サイズ244 nmの星状形状、約45 nm×10 nmの棒状形状の3種類の金ナノ粒子を合成した。実験では、2つの異なる神経膠芽腫細胞株と1つの結腸ガン細胞株でナノ粒子を培養し、10分後、180分後、285分後に画像を撮影した。

小さな球状ナノ粒子はガン細胞に容易に侵入したが、細胞は回復して分裂を続けることができた。大きな星型のナノ粒子は、細胞内で凝集するときに膜に穴を開け、取り返しのつかない損傷を引き起こし、最終的にはアポトーシスを引き起こす。これらのデータに基づいて、研究チームは、細胞による金ナノ粒子の吸収ダイナミクスの理論モデルを構築した。

「最終的な結果は、適切に処理されたパラメタを代入できる微分方程式であめ。当面はナノ粒子の形状とサイズのみを記述して、分析された粒子のガン細胞による取り込みが一定期間にわたってどのように進行するかを迅速に決定できる。科学者なら誰でも、自分の研究の設計段階でわれわれのモデルを使用して、実験的検証が必要なナノ粒子の変異体の数を即座に絞り込むことができる」と、研究著者、University of RzeszowのPawel Jakubczykは話している。