June, 28, 2024, 東大阪市--近畿大学理工学部 応用化学科教授 今井AE喜胤、大阪公立大学大学院工学研究科教授 八木繁幸らの研究グループは、近年注目の半導体材料であるペロブスカイト量子ドットを発光層に用いた、ペロブスカイト発光ダイオードに外部から磁力を加えることで、近赤外領域でらせん状に回転しながら振動する光「近赤外円偏光」を発生させることに成功した。さらに、加える磁力の方向を変えることで、近赤外円偏光の回転方向を制御できることも明らかにした。
特定の方向に振動する光を「偏光」といい、その中でも、電場および磁場の振動がらせん状に回転しているものを「円偏光」という。円偏光は、3D表示用有機ELディスプレイ等に使用される新技術として注目されている。一方、近赤外領域(700nm~1400nm)の波長を有する近赤外光は、肉眼では見ることができない不可視光であり、センサや光通信などの技術に用られている。目に見えない近赤外光の性質と光の偏光特性を組み合わせることで、より高精度かつ高感度なセキュリティデバイスやセンサへの応用が期待されているが、現状開発されている近赤外円偏光を発生させる手法は輝度が弱く、実用化には至っていない。
高い発光効率を示すことが期待されるアキラル(光学不活性)なペロブスカイト量子ドット型近赤外発光ダイオードについて、外部から磁力を加えることによる円偏光の発生を検討した。
近赤外領域に発光を示すペロブスカイト量子ドット型近赤外発光ダイオードに、外部から磁力を加えながら電圧を印加したところ、構成している材料がすべてアキラルであるにもかかわらず、近赤外円偏光の発生に成功した。また、磁力の方向を変えることにより、光の回転方向が反転することを見出した。
本研究は、室温かつ永久磁石による磁場下に、アキラルなペロブスカイト量子ドット型近赤外発光ダイオードを設置して電圧印加するだけで、容易に近赤外円偏光を発生させることができるという点で優れている。
研究グループは、この研究成果は、将来的に高度な次世代セキュリティ認証技術や、医療分野、光通信、センサなどの高機能光学デバイス開発などに繋がることが期待されるとしている。
(詳細は、https://www.omu.ac.jp/assets/attachmentfile/attachmentfile-file-47249.pdf)