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MicrosoftとQuantinuumの共同研究チーム、信頼性の高い論理量子ビットに関する画期的な実証実験結果

June, 18, 2024, Broomfield/London--世界最大の総合量子コンピューティング企業Quantinuumは6月5日に、同社の量子コンピュータ「H2-1」の大幅なアップグレードを行い、新たに業界で初めて56量子ビットを搭載したイオントラップ量子コンピュータとしての運用を発表した。これにより、H2-1は量子コンピュータ業界で最高峰を誇る忠実度をさらに高め、そのパフォーマンスは従来型のデジタル・コンピュータでは同機のシミュレーションを行うことが不可能なレベルに達している。

QuantinuumとJPモルガン・チェースの共同チームは、ランダム回路サンプリング(RCS)アルゴリズムを実行し、2019年にGoogleが発表した先行結果を100倍上回る驚くべき結果を達成し、クロスエントロピーベンチマークの世界新記録を樹立した。全結合56量子ビットと高い忠実度を備えたH2-1は、今日の最も強力なスーパーコンピュータや他の量子コンピューティング・アーキテクチャですらもこの結果に匹敵することを困難にしている。

Rajeeb Hazra(Quantinuum, CEO)は次のようにコメントしている。「われわれは、フォールトトレラント量子コンピューティングに向けた競争でリードを広げており、JPモルガン・チェースのような顧客のために、他の技術では不可能な方法で研究を加速させている。量子ビットの量ではなく、量子ビットの質に重点を置くことで、可能性を変え、金融、物流、輸送、化学などの業界における量子応用の待望の商業化に近づいている。」

Quantinuumの分析によると、H2-1で56量子ビットを用いRCSを実行した場合、従来のスーパーコンピュータで実行した場合と比較して消費電力を30,000分の1に削減できると推定され、今後さまざまな計算課題に適したソリューションとなる可能性を示している。

Marco Pistoia (JPモルガン・Head of Global Technology Applied Research at JPMorgan Chase)は次のように話している。「われわれのランダム回路サンプリング実験で達成された忠実度は、Quantinuum量子コンピュータの前例のないシステムレベルの性能を示している。われわれは、この高い忠実度を活用し、幅広い産業ユースケース、特に金融ユースケースのための量子アルゴリズムの分野を発展させることを楽しみにしている」
6月5日の発表は、2024年にQuantinuumが行った以下の一連のブレークスルーに続くものである。

・3月に、量子電荷結合素子(QCCD)アーキテクチャが大規模な量子ビット数に対応できることを実証し、長年の「配線問題」に対する解決策を明らかにした。

・QuantinuumのHシリーズは、デバイス内のすべての量子ビットペアに対して99.9%の2-qubitゲートフィデリティを初めて達成、フォールトトレランスを可能にする重要なマイルストーンに到達した。

・さらに、Microsoftとの共同開発により、量子コンピュータとして初めて、そして今のところ唯一、レベル2レジリエント量子コンピューティングを達成したH2-1が発表され、エラー訂正と検出を使用して信頼性の高い4つの論理量子ビットを作成し、エラー率を800分の1に低減した。

Dennis Tom (Microsoft Azure Quantumゼネラルマネージャー)は次のようにコメントしている。「Microsoftは、今回忠実度の高い56量子ビットのマシンを開発したQuantinuumとの継続的なコラボレーションを楽しみにしている。最近、両チームはAzure Quantumの量子ビット仮想化システムをQuantinuumの32量子ビットマシンに適用することで、信頼性の高い4つの論理量子ビットを作成した。Quantinuumの新しいマシンで利用可能な物理量子ビットを追加することで、さらに低いエラー率でより多くの論理量子ビットを作成できると期待している。これらのマイルストーンの到達を評価するとともに、今後も量子演算の信頼性、加えて量子コンピューティングの有用性の更なる向上を目指す。」

また、Quantinuumは最近、JPモルガン・チェースを始め、三井物産、アムジェン、ハネウェル(同社は現在も大株主である)が参加した3億ドルの株式資金調達を完了し、創業以来Quantinuumが調達した総資本は約6億2500万ドルに達した。

(詳細は、https://www.quantinuum.com/