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高稼働率の光格子時計で世界最高水準の時刻系を生成

June, 17, 2024, つくば--産業技術総合研究所(産総研)計量標準総合センター 物理計測標準研究部門 小林拓実 主任研究員らと、横浜国立大学 赤松大輔 准教授らは、光格子時計によって高精度な時刻系を230日間連続して生成することに成功した。

現在、光格子時計を使って得られる光の周波数を基準とするよう、秒の定義の見直し(秒の再定義)が議論されている。秒が再定義されると、現在の定義よりも数万倍も「目盛りの細かいものさし」が確立し、高い精度の時刻や周波数を社会に供給できることが期待される。秒の定義を見直すためには、新しい定義が現在の定義よりも高精度でかつ長期間安定していることなど、多くの課題が残っている。
その中で、光格子時計を用いて原子時計の周波数を調整し、精度が高く安定した時刻系を生成することは、秒の再定義に向けて達成が望まれる条件の1つとされており、各国で研究が進められている。産総研では、連続運転が可能な原子時計である水素メーザ原子時計の周波数を手動で調整して時刻系を生成しているが、光格子時計を用いて調整すると、さらに精度の高い時刻系の生成が期待できる。しかし、これまでは光格子時計を低い稼働率でしか運転できなかったため、光格子時計の停止期間に原子時計の周波数を正確に調整することが困難だった。

今回、過去に高い稼働率での運転に成功した光格子時計のデータを用いて、その際の水素メーザ原子時計の周波数を調整することで、光格子時計を基準とした時刻系を生成した。この時刻系は、230日間にわたって、その当時の国際的な時刻の標準である協定世界時(UTC)との時刻差±1 ns(10億分の1秒)以内という世界最高水準の同期精度を達成できた。今回の成果により、秒の再定義に向けた検討の加速が期待される。

この技術の詳細は、2024年6月7日(アメリカ東部標準時)に「Physical Review Applied」に掲載された。

(詳細は、https://www.aist.go.jp