Science/Research 詳細

100兆分の1秒の一瞬で生きた細胞の姿を捉えることに成功

June, 7, 2024, 東京--東京大学先端科学技術研究センタ他で構成される研究グループは、生きた哺乳類細胞の姿を観察できる軟X線顕微鏡を開発した。
従来のX線顕微鏡では、放射線ダメージのために生きた細胞の観察は困難だった。この研究では、広視野の結像ミラーと高輝度超短パルス光源であるX線自由電子レーザを組み合わせた新開発の顕微鏡により、哺乳類細胞の生きた姿を水の窓軟X線で観察することに成功した。この成果により、生きた細胞内での瞬間的な化学状態変化の可視化など、細胞生物学に新たな視点をもたらすことが期待される。

研究成果は2024年5月21日(現地時間)発行の米国科学誌「Optica」に掲載された。

「X線自由電子レーザー(XFEL)と超高精度なミラー光学系を組み合わせて開発した顕微システムにより、放射線障害が生じるよりも短い100兆分の1秒という瞬間に生きた細胞の像を得ることに成功した。これにより、可視光では観察できなかった炭素などの細胞動態が自然に近い状態で観察できるようになった。細胞の機能や構造を解析する新たな道が開かれたと考えている」(江川悟助教)。

研究グループ
東京大学先端科学技術研究センターの江川悟助教(研究当時:理化学研究所光量子工学研究センター)と三村秀和教授、同大学物性研究所の木村隆志准教授、同大学大学院工学系研究科の櫻井快大学院生、理化学研究所放射光科学研究センターの志村まり研究員と矢橋牧名グループディレクター、同光量子工学研究センターの山形豊チームリーダー、高輝度光科学研究センターの大和田成起主幹研究員他
(詳細は、https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp